暴れ三味線
スペインの舞踊フラメンコの根本理念に「ドゥ・エンデ」と呼ばれるものがある。
これは大地の精霊のことで、極めて優れたアーティストが神がかり的な演奏をした時に、
「ドゥ・エンデの神が宿る時」と表現されるそうだ。
こういう時、観客はゾクゾクッとした感覚があるが、
それは大地の精霊が入って来ているとスペイン人達は考えていると言う。
昨年の新宿末廣亭でのこと。
娘と友達は落語を楽しんでいたが、
この時は「神」回で、非常に面白く、寄席全体がある種独特の笑いの神に憑かれたような状態になっていたそうだ。
そうした中、三味線漫談の三遊亭小円歌が登場して、
場内をさらに爆笑の渦にさせたらしいのだが、
乗りに乗った小円歌が超絶的な速弾きを披露し、
末廣亭がまるでロックコンサートのようになったと言っていた。
また、今から25年くらい前の歌舞伎座で、
市川猿之助(現・猿翁)を観た時、
三味線を花道七三で演奏させると言う有り得ない演出を仕掛けて来た。
その速弾きのスピードたるや。
未だかつて見たことも聴いたこともない速度で演奏してきた。
この時、歌舞伎座の名イヤホンガイドの小山観翁氏が、
「これが猿之助歌舞伎なんです!!」と絶賛していた。
そして歌舞伎座劇場内はやはりロックコンサートのような盛り上がりを見せた。
三味線の速弾きはギターやエレキギターの奏法とも違っていて、
暴れまくっているように感じる。
日本の伝統芸能、畏るべし。
そして再びドゥ・エンデの神を感じたい今日この頃。
↓参考演奏↓