獅子座流星雨

「2001年11月19日の思い出」

皆既日食」の項で挙げた4つの天文現象の中で、
最も見る事が難しいのは、「流星雨」であろう。
極めて珍しく、偶然性に左右されてしまう。
唯一のチャンスは獅子座流星群の33年ごとの大出現時だけだ。

1998年、1999年、2000年と肩透かしをくらい、
(ヨーロッパでは大出現したが)
ほとんど諦めかけていたところ、
この一連の出現・不出現を正確に当てた、
イギリスのデヴィッド・アッシャー博士の予想を知った。
「2001年11月19日未明、日本を中心に大出現が見られるであろう」

国立天文台では、一見の価値はあるが可能性は少ない、と発表。
しかし、私はアッシャー博士に賭けた。
徹底的な晴天率調査を開始した。
NASAの地域・季節別雲量データ、
気象庁の天気図、アメダス、レーダー観測情報、
専門誌、インターネット等々。
そして当日、
群馬県草津のとある山の中に場所を確定させた。

強運を持つ友人と二人での観測態勢を整えた。
私も趣味の分野だけは強運の持ち主だ。

夕方6時頃は雲一つ無い晴天で、
もう天の川が見えている。
その時、東の地平線の下から、
大きな流れ星が下から上へ流れた。
幸先の良い出だしだ。

しかし、9時頃から雲が出だし、
10時頃からは全面的に曇ってしまった。

11時を過ぎた頃から、時折雲間を通して、
流れ星が流れているのが分かった。
2つ同時に流れる場合もあった。
何となく普通の流星群観測とは違う、
変な予感めいたものがあった。
何と言っても友人は超強運の持ち主だ。

案の定、1時を過ぎた頃から雲が少しずつ無くなっていった。
その頃から少しずつ流れ星の数が増えていった。

夏のペルセウス座流星群の時だって、
2~3分に1個見られれば上出来である。
しかし、今回の最大予想時間の頃(夜中の2時過ぎ)、
状況は一変した。
雲一つ無い快晴となった途端、
1秒につき1~2個と言う状況になった。
瞬間的に20個同時出現という事すらあった。
世紀の天体ショーがいきなり始まった。

さっきまで曇っていたため、
緊急の移動を考え、私は撮影の準備を敢えてしていなかった。
流星撮影専用の4連カメラを構えようとするが、
私は「動けなかった」。

私と友人は今まで見たことも無い光景に呆然自失となった。
体育会系のその友人は、
「畜生!小便行きたいのに動けねーぞっ!
何だこりゃーーー、凄い、凄すぎるっ!!」と喚き散らす。

それから明け方まで、
私達は空を見上げたまま、
ただただその世紀の大現象を見守る事しか出来なかった。

朝焼けの中、まだ流星雨は続いていた。
眩しい太陽が昇り、ようやくこの現象のピリオドが来た。

「流星雨」、この現象は「皆既日食」に勝るとも劣らない、
素晴らしい光景を見せつけてくれた。