皆既日食について

この自然界で人間が見て最も感動する現象は、
一般的に、
1.皆既日食
2.極大期のオーロラ
3.流星雨
4.大彗星
と言われている。

さて、今後日本で見られる皆既日食は、
2009年7月22日(種子島南端、奄美大島北端、トカラ諸島)
2035年9月02日(北関東)
である。

2009年は中学生になった子供と行けたらいいな、と思っている。

2035年のヤツは水戸から高崎方面に皆既帯がかかり、
物凄い大騒動になるはずだ。
(東京、横浜はギリギリで皆既にはならない)
もし生きていたら是非見たいと思っている。

ちなみに2012年5月21日、
東京、横浜では金環日食が見られます。
ダイヤモンドリングやコロナは見られないが、
それなりに面白い現象のはずです。

皆既日食の思い出」

1995年10月、私は子供の頃からの夢であった、
皆既日食」を見るために少ない貯金をはたき、
タイ東北部のナコーンラチャシマに向かった。

我々の日食観測隊は、バス4台を連ね、
前後にはツーリストポリスという、
ショットガン!を携行した警官の護衛が付いた。
交差点を通るたびにパトカーが周りの交通を封鎖し、
バスは一気に観測地へと向かう。

バックルダ寺院という辺鄙な田舎の寺の広場が観測地だ。

午前9:00、気温は30℃を優に超え、
座っているだけでも汗が噴き出してくる。
恐ろしく暑い。
趣味系だけには恐ろしく運の強い私。
この日も雲一つ無い「快晴」だ。

9:20頃から太陽が少しずつ欠け始めた。
実に退屈でゆったりとした始まりだった。
音楽に例えるなら、
凡庸で退屈なアダージョと言ったところか?

1時間ほど手持ち無沙汰で、
ビデオカメラの横で暇な時間を潰していた。

私は子供の頃からの天文好き。
皆既日食のビデオや写真だって何回も見たことあるし、
現代人として当然その発生メカニズムも理解している。
正直、高をくくっていた。

しばらくすると、ある事に気が付いた。
暑くない、否、涼しい。
熱帯地方の雲一つない快晴なのに。
太陽は80%以上欠けている。

この頃から、テンポが変わってきた。
アダージョからいつの間にかアレグロ(快速に)に変わっている。
急速に太陽は光を失いつつある。

理屈では分かっているのだが、
本能的な恐怖を感じ始めた。

皆既の10分前になると、
今まで見た事も無い黄土色の闇?が辺りを包んだ。
星が輝き始めた。

テンポはモルトヴィヴァーチェ(非常に速く)になる。
私の心は完全に恐怖に支配された。
人間だけではない。
鳥が一斉に群れをなしてねぐらに帰って行く。
犬が吠え始めた。
動物達も本能的にこの「天変地異」を感じとっているようだ。

糸のようになった太陽の最後の光が両端からスーッと消えてゆく。

最後の光が消えたと思った瞬間、
ドンッ!!と言う感じで、
ダイヤモンドリング」と呼ばれる現象が見えた。
私が今までの人生で見てきた物の中で、
ダントツ一番の「美中の美」であった。
情けない話しだが、私は全身が震えてしまった。

しかし、その最美の光は10秒くらいのうちに消えてしまう。

次の瞬間、再びドンッ!!と言う感じで、
皆既日食へ突入する。
コロナが天空を2分するように淡く長く見えた。
ビデオや図鑑で眺めた物とは訳が違う、
本物の迫力に震えた。

僅か1分30秒くらいで皆既が終わった。
その瞬間、再びダイヤモンドリングが見えた。

天の岩戸を開けて顔を出した、
天照大神

「最高」と言われる天体ショーは終わった。

もう10年以上も昔の体験だが、
今でもその時の光景が新鮮に思い起こされます。