独身高齢者の不幸を「笑点」で考えてみる

国民的人気番組「笑点」は未だに高い視聴率を誇っています。

現在の司会は春風亭昇太さんで、その前の司会の桂歌丸さん時代において、
歌丸さんのアイデアで昇太さんの「独身惨めキャラ」が作られたと言います。

春風亭昇太さんは人気の落語家です。

世田谷に豪邸があり、お城研究と言う楽しそうな趣味も持っています。

しかし笑点では「惨めな独身高齢者扱い」をされてしまい、
徹底的に笑い者にされています。

そんな時には、時に怒り、時に泣き、見事にそれを笑いに変えています。

実はこの着眼点は恐ろしいまでに人間の幸福と不幸を考える上でのケースモデルになっています。

バブル時代以降、日本人女性側からの一方的な結婚の延期や拒絶が一気に進行して現在に至っています。

日本の超少子高齢化は悪化している惨状を呈しています。

もう今の日本は結婚困難どころか恋愛困難社会とまで言われている状態です。

では当時結婚をしなかった人、あるいは出来なかった人は幸福な人生を歩めているのでしょうか???

もちろん結婚したからと言って幸福になれる訳ではありません。

逆にDVや離婚などで不幸になるケースも沢山あります。

しかしながら、非常に恐ろしい心理学的な事実が存在しています。

当ブログでは何度も何度も繰り返し書いてきております。

多くの独身者は自らの境遇を何とかして幸福であると思い込みたいので、
様々な言い訳を駆使してきます。

現代社会は自由だから個人の勝手だ、とか、
自分が幸福だと思っていれば幸福なんだ、とか、
価値観は多様化しているから結婚に縛られるのはおかしい、等々。

実はとんでもない間違いです。

人間が幸福になるための方法もしくは価値観は3つしかありません。

幸福であると言う状態を考えた場合、
如何なる行動もこの3つに含まれてしまいます。

それ以外には存在していないのです。

そこで前述の春風亭昇太さんの事例で考えてみます。

売れっ子の芸人さんで世田谷に豪邸までありますから、
間違いなく彼は人間の三大幸福原則の1つである≪パワー動機≫はほぼ満たしています。

パワー動機とは「勝った時に得られる幸福」です。

身近な例で言えば自分の所属するスポーツクラブの試合で優秀したら喜ぶでしょう。

あるいは、昇進して給料が上がったら喜ぶでしょう。

志望していた有名大学に合格したら喜ぶでしょう。

お金持ちになり高級レストランで他の人より美味しい物を食べるのは嬉しいでしょう。

これがパワー動機で得られる幸福の具体例です。

特にお金はパワー動機を考えた場合、
無視できない非常に重要な、絶対に外せないものと言えます。

他にパワー動機に属するものとして大切なのは、
お金以外では、職業、社会的地位、容姿、学歴などが重要視されているかと思います。
(勝ち負けがはっきり出易い分野です)

次に春風亭昇太さんは落語家と言う職業以外に、
「お城研究」と言う趣味を持っています。

お城のことを語り出すと非常に嬉しそうです。

趣味などの自分が本当にやりたい事を持ち、
それを成し遂げることに幸福を感じる行為。

これを≪達成動機≫と呼びます。

昇太さんはお金もあるでしょうから、
大好きなお城研究に時間もお金もたっぷりとかけて楽しんでいます。

従って彼は達成動機もかなりの部分で満たしています。

しかしながら、何故笑点では惨めな扱いを受けるのでしょうか。

はい、幸福の三大原則の最後を満たしていないからとなります。

それはもちろん独身だからです。

歌丸さんはよく昇太さんに「オマエも早く嫁をもらえよっ!」と言って笑いを誘っていました。

昇太さんもそんな時は惨めっぽい感じで苦笑していて、
会場のお客さんもそのような様子を見て大笑いをしていました。

何故、笑うのでしょうか???

何故、笑えるのでしょうか???

実は無意識のうちに、見ている人は「本当に惨めだと思うから」なのです。

心理学的に言うと、非常に残念ながら昇太さんは≪親和動機≫を満たしていないのです。

親和動機とは人と人が仲良くした時に得られる幸福を指します。

しかしながらこの親和動機と言うヤツは、
誰とでもいいから仲良くすればいい訳ではありません。

恐ろしいまでに優先順位があります。

親子関係>夫婦関係>兄弟関係>親戚関係>恋人関係>職場関係>友人関係>他人

この順位は、下に行くほど人によっては順位が入れ替わる事が可能ですが、
基本的にはこの順番だと思って間違いないです。

おかしい、と言う人も多いでしょう。

何故恋人関係の順位が低いんだ、と。

しかしこう考えればご理解頂けるかと思います。

恋人とは、付き合っている時は唯一無二の人に思えますが、
実は簡単に交換が可能なのです。

その証拠に別れてしまうカップルは普通に極めて多くいる現実があります。

愛が冷めて別れたらもう単なる他人に成り下がります。

もっと言うと他人以下になるのも珍しくはありません。(笑)

つまり、恋人関係とは、何もその人でなくても代わりがいると言う現実があります。

永遠だと思い込むのは勝手ですが、
実際には冷めてしまう恋愛の方が非常に多い現実があります。

この辺を何も考えないで恋愛至上主義に走る人は・・・・・

よくニュースになっています。(苦笑)

職場関係も大切ではあります。

失業は自分の生活の危機を迎えてしまいますから、
職場関係を非常に重要視する人はかなりいます。

しかしながら、本当に嫌になったら転職と言う手段があります。

つまり生活苦に陥る危険は否定できませんが、
会社の人間関係とは、別の人でも何ら構わないと言う冷徹な事実があります。

友人も同様です。

自分達の友情は永遠に続くと思っている人は多いですが、
現実の世界では絶交する話や疎遠になる話など普通にゴロゴロしています。

実際、小学校や中学校時代の友達と大人になってからも交遊が続いているケースは想像以上に少ないと言います。

もちろん友人達と遊ぶのは楽しいですし、
場合によるとかけがえのない知識や体験を教えてくれるかも知れません。

けれども血が繋がっていない以上、
一旦トラブルが起こって嫌になったらあっさりと付き合わなくなります。

しかしながら、親子関係は代替がききません。

従って親子関係の不和は即不幸に直結しています。

夫婦関係も、子供がいなければ離婚は比較的簡単で、
その意味では恋人関係と大差ありませんが、
もし子供がいた場合、これは大変な事態となります。

子供と言う血で繋がった共通の関係が出来るため、
非常に深くて断ち切り難い関係が構築されてしまう構造です。

親戚ならば疎遠にする事も可能ではありますが、
何らかの形で、例えば法事などで顔を合わせる機会もあり、
大変な不愉快を感じるケースは良く知られています。

この血で繋がった関係を良好に保つことこそが、
親和動機の最優先事項と言えます。

しかし結婚しなかった場合、
最も大切な子供と配偶者が得られない事を意味します。

だからこそ、昇太さんはその部分をイジられているのです。

オマエは惨めなんだ、と。

如何なる巨万の富を得ても、
親和動機は満たせないのです。

従って、好きな人にふられて自殺する金持ちもよく聞く話です。

この部分を無視して他のパワー動機や達成動機をどんなに満たしても、
親和動機を満たさない限り幸福にはなれません。

そして親和動機を満たすためには相手が要ると言う一点において、
想像以上に難しいと言えます。

さらに人間は良くも悪くも「性」を持っています。

他の全ての性を持つ生物同様、成熟したら性行動を行ないます。

これは間違いなく親和動機に含まれるものです。

パートナーがいない人生は惨めであるのです。

それが親和動機の恐さであり、
如何なる言葉をもってしても言い訳が通用しない世界です。

しかし現代社会は不幸を不幸として見ないで、
それでも幸福になれると言う嘘を蔓延させます。

そしてパワハラだ、セクハラだと言って、
実は人生の冷酷な真実から目を背けようとします。

昇太さんは男ですから、
見ている視聴者は面白そうに笑います。

しかしもし昇太さんが女性だったらどうでしょうか?

もし「オマエも早く結婚しろよ!!」と言った途端にセクハラが成立してしまいます。

しかしながら恐ろしい事に。

現代では、いくらセクハラだから言わないようになってはいても。

女性だから親和動機が満たされなくても幸福になれるという訳はありません。

親和動機の問題は想像以上に恐ろしく、
しかも高齢になればなるほど深刻な事態になります。

その時、周囲に血族や配偶者がいない場合。

恐ろしいまでの孤独が待っています。

これが親和動機の恐さだと私は思っております。

終わり