中学受験と親の生活

小津安二郎監督の映画作品を連続して観ていたら中学受験を思い出しました。

小津作品では歌舞伎、能、クラシック音楽、美術館、博物館などの、
「芸術」「学術」のような「知」を非常に効果的に使ってきます。

さて、私の娘が小学校に入学したら直ぐ、学級崩壊やイジメが多発し、
大変悲惨な状況に陥ってしまい、途方に暮れていました。

そしてひょんな事から、親として出来る最大の解決策として、
中学受験と言う全く自分の知らない世界に飛び込んで行った経緯があります。

つまり当時の小学校に見切りをつけて、
何とか適当にやり過ごさせて、中学は地元とは違う別世界で仕切り直しをするんだ、
と言う明確な意志を持って娘の小学生時代を過ごしていました。

最初の中学受験塾の保護者会を私はとても良く覚えています。

おおよそ、以下のような事を先生が語ったのです。

「今日お集り頂いた皆様は、当塾に入って中学受験を志したのです。
 中学受験の世界は、子供達だけで行われるものではありません。
 親の皆様の生活も問われる世界なのです。
 皆さまご自身が休日に何をされているのか?を今一度問い直さないといけないのです。
 はっきり言ってしまいますと、親自身が休日にパチンコやら競馬やらに行って、
 自分の子供だけが良い学校に入れると思ったら大間違いです。
 例えば、休日には親子して博物館に行って共に様々な体験をしましょう。
 5年生になったらそんな時間は無くなりますので今のうちだけですよ。
 旅行に行った時でも、具体的に言いますと、
 中央高速には途中に釈迦堂パーキングエリアと言う場所があります。
 そこでは扇状地の地形が一発で理解できる光景を見ることが出来ます。
 博物館もあります。
 このような実体験を通じた「知」を身につけさせて下さい。」と。

中学受験の世界は、確かに塾の先生の言った通りでした。

親子が二人三脚で立ち向かわないといけない厳しいものでした。

まあ、親の私の力不足で大成功と言う訳には行きませんでしたが、
それでもその時に学んだ事はその後の自分の人生にも大きな影響がありました。

小津安二郎監督の映画作品では、
芸術や学術の世界を大変重要視しているのをひしひしと感じます。

人間が人間的であるとはどういう事なのか?

そこをグイグイと攻めてくるのが小津作品の真骨頂とも感じています。

「知」の世界をも揺るがす人生の大問題を描いてきて、
そこで悩む人間像はかなり魅力的に思うのです。

知の世界に住んでいる者でも人間関係にはとことん悩み、
それでも何とか解決し、やっぱり悩み、と。

まあともかく。

小津作品は色々と考えさせられて堪りません。

終わり