「皆既日食観測」の注意点とポイント

今年7月22日、久しぶりに日本の領土内で皆既日食が見られる。

しかし、見られる場所は硫黄島種子島南端、屋久島、南西諸島、奄美大島北端・・・
極めて限られた場所だ。

後は中国の上海や武漢などか・・・

いずれにせよ、日本で見るのはかなり条件的に厳しい。

ここで、僭越ながら経験者として、
観測の際の注意点とポイントを書いておきたいと思う。

・「見られる場所に行く」と言う超初歩的な事がまず第一にある。
 意外にもコレは難しい。
 事前の調査と準備を詳細にしておく事。

・もっとも注意をすべき点。
 それは「皆既日食に至るまでの部分日食の観測」にある。
 
 意外に思うかも知れないが、
 皆既になる20分前くらいまでは、
 ほとんど風景に変化がない。
 
 従って、良く見られる「部分日食」の観測と、皆既の直前までは一緒である。

「必ず、必ず、必ず、『日食観測専用のフィルター』を通して太陽を見る事」

擦りガラスは絶対に不可。

一見、普通に太陽が見えるのだが、専用ガラス(フィルター)以外は、
赤外線を通してしまうので「網膜を焼いて」しまう。
最大級のご注意をっ!!

しかも、専用フィルターをかざして見るのではなく、
眼の側ギリギリ、1cmくらいの所で観測する事。
(脇から太陽光が侵入してしまう)

最も安全に途中の部分日食を観測できるのは以下の方法である。

(念のため、皆既の約3分前になったら全てのフィルターを取り外し直接肉眼で観測できる
でも、見続けるのはダメ。チラ見程度に。
 ダイヤモンドリングは見逃せないので、凝視は30秒くらい前???)

・口径の小さい天体望遠鏡と太陽投影板を使用した方法。
 (写真参照)

 もし携行の可能な自動追尾装置のついた小型天体望遠鏡をお持ちなら良いかもしれない。

イメージ 1

↑小さな天体望遠鏡でないと無理である。太陽の光が強すぎてレンズを傷める。
 小さい望遠鏡を使用し、さらにレンズの先端に光量を絞るキャップを付ける。

イメージ 2

↑太陽投影板に映し出された部分日食中の太陽。
 これは、日本で起こった部分日食の時に撮影した写真。

イメージ 3

↑その拡大写真。
 これだと、非常に安全に、しかも、自動で追尾してくれるため、
 ノータッチで太陽の観測が安全に出来る。
 ちなみに黒点までが非常にリアルに見えるのが面白い。


それでは、皆既日食に至るまでを時間系列で注意点とポイントを述べたい。

皆既日食」は想像以上に、非常に非常に非常に感動的な現象である。

従って、初めて見る方は、余程のマニアでない限り、
「見る」だけに留めておく事をお勧めする。

ちなみ私の場合は「ビデオ撮影」だけだった。

三脚にビデオを固定して、ライブビュー画面を見ながら、
ズレたら微調整と言った、きわめて安直な方法。

これは正解だったと思う。

全身胴震いの大感動が押し寄せてくるので、
より精密度の要求される写真撮影は二回目以降にした方が無難かも???(^^;


まず、第一接触と呼ばれる、月の影が太陽と接した瞬間から、
第二接触と呼ばれる皆既に突入する瞬間まで、
大体1時間半くらいかかる。

・まずは非常に、のんびりとした感覚で始まる。

 最初の1時間はむしろ暇を持て余すだろう。

・1時間くらい経過すると、かなり太陽が細くなっているのが分ってくる。
 しかし、明るさはほとんど変わらない。

・しかし、微妙にこの辺りから「涼しく」なってくる。

 ちなみに私の場合は、Tシャツ1枚でいたら肌寒くなり、上に半袖のシャツを着たほど。
 (場所はタイの東北部、ナコーンラチャシマ。95年。気温は30度以上だった)

・皆既約10分前。
 急速に、いきなり、暗くなってくる。
 
 黄土色の闇が辺りを包み込む。

 金星が見えてくる。

 鳥がねぐらに帰り始める。

 本能的な恐怖、天変地異の前触れを、否応なく感じる。

 この頃から「理性」が完全に一気に吹き飛ばされてしまう。

・皆既5~3分前。
 太陽が糸のように細くなる。
 
 (私の観測時の時は)アナウンスがある。

 「只今、皆既5分前です。今回も、ここまで来れば確実でしょう。
  これより、アナウンスは致しません。
  眼視観測の方も、カメラで撮影の方も、
  全員、フィルターとガラスを取って、直接太陽を見てください。
  この地球上で見られる最も美しい光景をお楽しみ下さい。」

・全員が一斉に眼視用のガラス、撮影用のフィルターを取り外す。

・皆既数十秒前。
 
 物凄く細い糸のような太陽の最後の輝きが、
 両端からスーーーっと消えて行く。

 恐ろしいまでの恐怖感に震える・・・

・「ドーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!」
 と言う感覚で、非常に突然、瞬間的に、
 「ダイヤモンドリング」と呼ばれる現象が見られる。

 神の領域に一気に突入する。
 
 涙せよ。
 
 この地球上で最も荘厳で美しい光景。
 
 「あらゆる美の根源の輝き」に震えながら涙せよ。

・10秒・・・僅か10秒で、この現象は消え去る。
 次の瞬間・・・

・再び「ドーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!」と言う感覚で、
 いきなり「皆既日食」に突入する。

・コロナが天空を2つに分けるように、おそろしいまでの広がりを見せる。
 その中心部分には、まるで魔界の入り口のように、
 真っ黒な円が、ポッカリと開いている。

 この荘厳な光景・・・

 星達も見える・・・
 (一等星くらいだが・・・)

・そして、太陽の一方の端が微妙に赤くなってくる。

・次の瞬間、再び、「ドーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!」と言う感覚で、
 「ダイヤモンドリング」が現れる。
 
・嗚呼、天照大神!!

・そして、この最大の天体ショーは幕を降ろし、
 通常の部分日食に戻って行く。

・ここでポイント。
 終わって、撮影など続行しない方は、木陰に行ってみると良い。
 木漏れ日の太陽が三日月型になっているのが分る。
 写真があるのだが、ちょっと今見当たらないのが残念だ。



総括:とても平常心を保っているのは難しい。