自然体験

確か高木美保と言う女優が何年か前、
NHKの討論番組でとても興味深い話しをしていた。

「都市部に生まれ育った者にとって、
ごく身近に自然があったのは今40代の人までです。
それ以降に育った人は、その親が積極的に自然体験をさせない限り、
一生自然を知らずに育つ事になる。」

なるほど、今私は40代。
東京都港区に生まれ育った。

その当時は大きな野原がそこかしこにあった。
しかし、今その場所には全て「億ション」が建ち並んでいる。
この様子は作家の安部譲二氏のエッセイにも書かれている。

さすがに70年代の「多摩川」や「東京湾」から比べると、
環境保護の思想が行き渡り、
当時よりはかなりマシになったと思う。

しかし、周辺にある川は全てコンクリートの河川工事が施され、
水の汚染度はマシになったとは言え、
とても泳げるような川ではない。

もし、親が「本物の泳げる川」に連れて行って泳がせない限り、
その子供は「川とは泳げない汚い場所」と思い込んでしまう。

そんなふうに育った子供達に教科書の中だけで、
「自然を大切にしよう」「環境保護」と叫んだところで、
誰が本当に心からそう思うだろうか?

「きれいな泳げる川」を知らない限り、
無関心になって行くだけだ。

幸い、中学受験において「環境問題」は必須だ。
伝説となっている麻布中学の「石の問題」など、
実際の自然体験がなければ解けない問題を出してくるのは面白い傾向だと思う。

昨今、格差社会と言われている。
貧富の差、学力差も広がるだろうが、
「自然体験度」の格差も大きくなっていると思う。

渋谷あたりを歩いていると、
私の少年時代とは全く違う人種が出現しつつあるように勘繰ってしまう。

勉強も大切だが「自然体験」は子供にとって必要不可欠なものと思っている。