キャンプ騒動その6[氷の洗礼]

イメージ 1

キャンプ騒動その6
[氷の洗礼]

[暴力的気温変化]~[あわや凍死?]~[至福の時] 

注:危険なので絶対マネしないで下さい。(笑)

平成16年1月10日~1月12日
場所:ウェルキャンプ西丹沢
天候:快晴~曇り  風:弱い~時にやや強い   
気温:下手すると本当に死んでしまう寒さ

ついに冬がやってきた。
この20年ずっと待ち続けていた「冬のキャンプ」だ。

今までのチャラい装備とは全く違う、
20年かけて収集してきた耐寒装備に切換える。
-30℃になっても凍死はしないハズ?、
-20℃くらいまでは快適に動けるハズ?の装備である。
しかし、あくまでこれはカタログや本で読んだデータであって、
自分に当てはまるかどうかは当然分からない。

私は寒さには決して強い方ではない。
しかし寒いのは子供の頃から大好きである。
「第一級の寒波が到来し、都心でも最高気温は氷点下・・・」
などという天気予報を聞くと、いまだにワクワクしてしまうほどだ。
(^^;

今回の目的は、
「冬季丹沢の自然観察」
「最終目的の一つ、福島県桧原湖畔における厳冬期キャンプの予行演習」
「本当に厳寒の中で飲むウィスキーは美味いのか?(私はウィスキー嫌い)」
の三つである。

行く前に、実は私自身、はたして大丈夫かな?、
という消極的な気分でいたが、
意外にも子供がやる気満々で、催促されてしまったのには驚いた。
雪だるまを作りたいという単純な動機らしいが・・・(苦笑)

当然の如く、今回一緒に来てくれる方々は一組もない。
キャンプ志向のかなりある方々からも、
「いくら何でもそこまでは・・・」と言われ、ひかれてしまった。
まあ、命に関わる以上当たり前の事であるが。(苦笑)
結局子供と私だけになってしまった。
(^^;

1月10日
天候:快晴   風弱し。
気温:昼間12℃、夜間-6~-7℃、明け方-10℃くらい

「ウェルキャンプ西丹沢」
このキャンプ場はA~Eゾーンに分かれ、
一つのゾーンだけでも普通のキャンプ場くらいの大きさがある。
最盛期は2000人以上の人達が一斉にキャンプを楽しむ、
広大なマンモスキャンプ場だ。

しかし、この日キャンプをするのは私以外に一組だけ!!
Aゾーンという電源付き入門者向けサイトに一組だけがいる。
その一組は父と息子の二人連れのようだ。
つまり、この広大なキャンプ場でテント泊するのは4人だけ。
B~Eゾーンまで完全に無人だ。
はっきり言って恐ろしくなってくる。

受付の人は「装備は大丈夫ですか?相当寒いですよ」と心配そうに聞く。
私は「はあ~、一応、厳冬期山岳用の寝袋を持参してますが・・・」
と力なく答える。
そしてその場で受付の人の勧めもあってAゾーンを希望する。

人間とは勝手なもので、混雑したシーズン中だと、
「人が多すぎる!!」と文句を言うが、
大自然の中で、「本当にだ~れもいなくなる」と、
それは恐怖以外のなにものでもない。

車から降りると、意外にも寒くない。
都心とほとんど変わらないので少し安心した。
持参した耐寒装備の着装すら必要ない。
普通のマウンテンパーカだけで充分だ。

このところ仕事が忙しく、準備に手間取ってしまい、
出発が遅れた事もあり、時間は昼の1:00過ぎだ。
冬山の夕暮れは早いので、
4:00までには設営を完璧に終えなくてはいけない。

大型スクリーンタープを張り、今回はタープの中に小型テントを張る。
ブルーシート→テント用グランドシート→テント→インナーマット→エアーマット
という構成で大地からの冷却を完全に遮断しようとするが、
昼間暖かかったためブルーシートを省いてしまった。
また、テントも厳冬期山岳用テントを持参するつもりだったが
直前になってマットとサイズが合わない事が判明し、
普通のテントにしてしまった。
(これは失敗であった)
勿論、耐寒寝袋+寝袋カバー+毛布の重装備である。

設営を終え、散歩を楽しんだ後、
4:00過ぎから、
キャンプ場のサービスで「どんど焼き」なるものが始まる。
枯れ枝に色とりどりのダンゴをさしたものを、
巨大な焚き火であぶって食べる。
豚汁のサービスもあり、とても美味しかった。
お陰で夕食の必要が無くなったのも嬉しかった。

[暴力的気温変化]

巨大な焚き火のお陰で分からなかったが、
5:30頃にキャンプサイトに戻ると、
恐ろしい事に気が付く。
気温が急激に下がっているのだ。

今回初めて使用する大型スクリーンタープに入ってみると、
天井にきれいな模様がある。
「へえ~、凝った造りだな~」と感心し、
よくよく触って見ると模様ではなく結氷であった。
温度計で確認すると、タープ内で-1℃を指している。

つまり数時間の間に12℃くらいから一気に氷点下になったのだ。
体がこの温度変化についてゆけない。
これは、はっきり言って「寒さの暴力」だ。
山で遭難して死亡する人の感覚が良く理解できた。

早速「焚き火」を始める。
秋の焚き火は余裕の遊びだが、
冬山の焚き火は本気にならざるを得ない。

6:00過ぎに星々の饗宴が始まったのも驚異だが、
今は星にかまっているヒマはない。

しかし、昼間暖かかったせいで、焚き木の量をケチってしまい、
あまり暖かくならない。
早々と焚き火に見切りをつけ温泉につかる。
たっぷり1時間以上入り、充分に暖を取った。
勿論、露天風呂はほぼ完全な独占状態であった。

8:00過ぎには寝袋に入る。

[あわや凍死?]

子供には山岳用耐寒寝袋(-20℃~)を与える。
「とても暖かい」と言い、早々と寝息を立て始める。
この寝袋は高価なため、生憎一つしかない。
私は、封筒型寝袋(2℃~)とスリーシーズン用マミー型寝袋を重ね、
さらに寝袋カバー、毛布という組合せである。
本によれば、これで-20℃くらいまでは耐えられるとあった。
事実、とても暖かかった。(午前3:00までは・・・)

午後11:00、トイレに起きたので、
温度計で確認すると、タープ内で-5℃を指している。
外気温は-6~-7℃になっているようだ。
これから放射冷却が強まり、
明け方に最低気温になる事を思うとゾッとする。

午前3:00、寒さで目が覚める。

子供を見ると、さすがに山岳用耐寒寝袋、
ビクともしないようで、ぐっすりと寝ている。

私は、上部は暖かいのだが、下部(大地側)が寒い。
大地からの冷却遮断が完璧ではなかったようだ。

寒いのと眠いのと疲れで、寝袋から出る気力もなく、
(車の中に置いてある耐寒着を取りに行けば解決したのだが・・・)
結局午前3:00から日が昇るまで、
串焼きの具のように、寝袋の中で体を回転させ続けて、
体が冷えるのを防いだ。
動きを止めて寝込んでしまうと凍死しそうなので、
かなりミジメな状況であった。

この時ほど太陽を待ち遠しく思った事はない・・・
(T0T)

1月11日
天候:快晴    風弱し。一時的に強くなっただけ。
気温:昼間10℃、夜間-6~-7℃、明け方-10℃くらい

朝太陽が昇り、暖かくなった途端に、
寝袋から飛び出し、耐え切れず、すぐに焚き火をした。
一息ついてから朝食の準備をした。
朝からボリュームいっぱいのスパゲッティーミートソースを作る。

昼間は暖かいので、あちこちと散歩をして楽しんだ。
いたるところに鹿のフンがあり、
私のテントのすぐそばにも新しいモノがあった。
夜間知らぬうちに出没していたようだ。

残念ながら雪だるま作りは、
雪は所々残っているのだが、
完全に凍っており、不可能であった。

気象庁予報部によると、
今晩は今年一番の冷え込みになるとの事で、
昨晩の二の舞は踏みたくないので、
冷却遮断と耐寒装備を完璧にしておく。

[至福の時]

夕方から再び「暴力的気温変化」が起きた。
この時とばかり、盛大な焚き火を始める。
今回は薪の量を二倍にし、
かつ、そこら中から焚き木を拾ってきて、
集めておいたヤツをぶち込む。
1m以上の炎をあげて燃え上がる。
凄く暖かい。

そして、内ポケットに入れておいたピューターを取り出す。
中に入っているのは、
ジョニーウォーカー、スイング」である。

私はウィスキーが嫌いだった。
特に水割りなんて、薬臭くて飲めたモンじゃない。
しかし、ある時友人から、
「ウィスキーは本来、
スコットランドのような寒い地域で発達したものだ。
その真価は、厳寒のフィールドで飲んでこそ分かるはず。」
との助言に頷き、今回の実験と相成った。

さっそく、ストレートであおってみる。
カーッと喉が熱くなるが、
後味が「甘い」。
何とも言えない快感だ。
とてもアルコール度数が43度とは思えない。
「これはアルコールが抜けているのでは?」
と思い、焚き火の脇に数滴降りかけてみる。
途端青白い炎がボアーッと上がる。

イスに腰掛けて、
厳寒の中、炎を見つめながら、
ジョニーウォーカーをあおり続ける。
素晴らしい快感だ。
これこそ「至福の時」ではないのか?

勿論酔っ払う訳にはいかないので、
ほろ酔いで終わりにした。

この夜は装備がモノをいい、
寒さは全く感じなかった。

それでも午前3:00に、
子供が「寒い」と言い出した。
体ではなく、「顔」が寒いと言っている。

仕方ないので、携帯ストーブに火を点ける。
しかし、点かない。
-5℃以下になると、
液化ガスが気化せずに燃えなくなる事を忘れていた。
すぐに自動車の中に置いてあった、
寒冷地用カートリッジに切換えた。
一発で点火し、みるみるうちにタープ内の気温が上がる。
結氷も溶け出し、+10℃くらいになる。
酸欠が怖いので、タープの裾を少し持ち上げて、
そのまま寝た。
実に快適に寝ることが出来た。

1月12日
天候:曇り    風弱し。
気温:日中でも3℃までしか上がらなかった。

朝、天気予報通り、かなり冷え込んだようで、
添付写真のように、
水道の蛇口からの滴が凍り、
下の流しと直結しツララ状態になっていたほどだ。

午後から自宅に親戚が来る予定なので、
早々と撤収作業を終え、
昼にバーベキューをし、早めの帰宅と相成った。

[結論]

今回のキャンプの結果分かった事は、
低学年の子連れキャンプの場合、
「これが限界である」という事だ。
風がなかった事は最大のラッキーであった。

ウェルキャンプ西丹沢は、
道路が空いていれば自宅から1時間半で行ける。
つまり最悪の場合でも、
自動車に飛び乗れば大抵は切り抜ける事が出来る。

しかし厳冬期の山岳地帯に行けば、
(例えば桧原湖
緊急事態に対し、なすすべがほとんど無くなる。

しかし、私は懲りてしまったのだろうか?
「いいえ。」
次回、いよいよ最終目的の一つ、
福島県桧原湖畔での厳冬期キャンプ」に
その気になってしまっている。
今年は無理かもしれないが・・・

何故こんな事をしたいのか未だに自分でもよくわからない。
でもはっきり言えるのは、かなり「楽しい」という事です。

それでは皆様ごきげんようっ!!
(^_^v