日本人の妻、フランス人の妻、ドイツ人の妻

「日本人の妻、フランス人の妻、ドイツ人の妻」

フランスについての番組を見ていたら、
レストランで随分とシェフに熱い視線を投げかけている女性客がいた。

この女性、シェフの妻で毎日のように店に客として来ると言う。

旦那の方も満更ではなさそうだった。

この場面を見て、随分昔ドイツに行った時のことを思い出した。

到着したのは日曜日で、チャーターされたバスで移動していた。

バスにはガイドさん以外に金髪の女性がいて、
この人は誰なんだろう?と皆思っていた。

すると、それは運転手さんの奥さんで、
今日は日曜日なので本当なら絶対に仕事をしないで夫婦水入らずでいるべきなのだけど、
仕事が入ったのでこうして旦那さんのそばについているのだ、とガイドさんは説明してくれた。

しかもガイドさんは「これは決して珍しい光景ではありません」と言い切っていた。

乗客のほとんどは大企業に勤める日本人男性だったので、
「えええーーーーーっ!!」と全員驚いていたのが印象的だった。

案外知られていないが、日本人の夫婦関係とヨーロッパ人の夫婦関係は随分と違う。

もちろん離婚も多いが、基本的にヨーロッパ人は、
休日は夫婦は共に過ごさなくてはならないと考えているようだ。

フランス人もドイツ人もそのように感じたし、
イギリス生活が長かった私の妹はイギリス人もそうだと断言していた。

そして私は彼らには強烈な意志を感じる。

これを乱す者は許さない、と。

日本だと休日出勤など当たり前のように要求されるが、
ヨーロッパで迂闊にそんな事をしたら即座に訴えられてしまうだろう。
(実際にそうなっているようだ)

連日の遅くまでの残業も同様だ。

彼らの根底にはキリスト教精神があるので、
家族関係を乱すような要求には絶対に応じない。

そもそも労働を宗教的に罪悪と思っているフシもある?(苦笑)

ちなみに先日も池上彰氏の番組で報じられていたが、
「転勤」「単身赴任」「長時間労働」は基本的に有り得ないらしい。

何故なら契約でそう決まっているから。

最初の労働契約で「どこで勤務するのか」が明記されているから、
企業側の理屈で勝手に社員を移動させる事は不可能になっている、と。

驚くべき事に「転勤」「単身赴任」は日本のみの現象なのだと思っておく必要がある。

さらに、例えば上司が突然休日に出勤してもらいたくて、
部下に休日電話を掛けた場合、
ドイツなどでは下手をすると裁判沙汰になる可能性すらある、とテレビ番組では語っていた。

従って、かなり劣悪と思われる日本の労働環境では、
連日の残業や休日出勤により、家族との時間が大幅に削られている。

そのため、夫婦間でも「亭主元気で留守がいい」などと本気で言う妻も出て来る始末なのだが、
実は、もしこれが本気だった場合、ヨーロッパでは即離婚ケースになってしまう。

夫婦とは休日は共に過ごすべき存在なのだ、と言う強烈な信念をもっている彼らには、
妻だけの行動、夫だけの行動と言うのは罪にすらなり得る、と。

彼らを見ていると、私は・・・普段は極右と言ってもいいくらいの思想を持っているのだが。

ヨーロッパ人の方が遥かに遥かに人間的に見えてしまう。

そして幸福に見えてしまう。

事実、日本は「自分の人生を幸福だと思うか?」と言う国際的な調査では、
もう何年も先進国の中では「最下位をキープし続けている」と言う恥ずべき状況が続いているのだ。

しかも世界中の調査対象の国と比較しても、
戦争している訳でもないのに決して上位ではない。

これは日本人の労働環境と無縁ではないように思う。

恋愛、結婚、出産、育児、教育・・・こう言った行為が非常に難しくされている現状。

(日本人の社会人の男性は)デートなどいつ出来るのだろうか?

婚活など(日本人の男性は)いつ出来るのだろうか?

そして超少子高齢化社会。

劣悪な労働環境により幸福を感じられない社会。

猛省すべき時期が来ているのではあるまいか?

もしかすると手遅れなのかも知れないが。

終わり



余談:

何度か記事にした事があるが、
日本の労働環境とアチラの労働環境の違いが顕著に分かる例なので再度書く。

日本の銀行に勤めていた男がアメリカ支店長として転勤になった。

アメリカ人の従業員は意外にも皆優秀で満足していた。

中でも直属の部下の女性が非常に優秀で有難いと思っていた。

ところがある金曜日の夕方のこと。

残業の必要があったので彼女に「残業してくれ」と言ったら思わぬ返答があった。

「今夜はデートなので無理です」と。

日本人的には有り得ないこの回答に対して支店長はこれまた日本人的に怒ってしまい、
こう言ってしまった。

「君は一体デートと仕事とどちらが大切だと思っているのかね!!」と。

するとここでその優秀な女性からこういう回答があった。

「デートに決まっているでしょうっ!!」と。

そうしてその女性から思い切り軽蔑された目付きで見られた挙句に帰られてしまった、と。

何か薄汚い物を見るような目付きで。

彼らは、自分の家族や恋愛行動を邪魔する連中を許さないのだ。

これは実は人間として当たり前の行動だと思う。

もっとも、だからと言ってアメリカに残業が無い訳ではない。

しかしこの支店長はアメリカ人に対して残業を命じる方法を知らなかっただけだ。

もっとも残業が続くような業務体制であるのなら訴えられてしまうだろうが。

いずれにしても「デートと仕事とどちらが大切だと思っているのか?」と言う問いに対して。

日本以外の国においては、
「仕事です」と答えるようなヤツは≪本気で≫変態に思われるので要注意である。