男と女は簡単に危機に陥る : 映画「フレンチアルプスで起きたこと」

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≪フレンチアルプスで起きたこと≫
原題    Turist
製作年  2014
製作国  スウェーデンデンマーク・フランス・ノルウェー合作
配給    マジックアワー
上映時間        118

20代のほとんどをヨーロッパで過ごした妹がまたこの映画を観ろと貸してくれました。

この映画の製作国はスウェーデンデンマーク、フランス、ノルウェーの合作ですが、
内容的には家族でフランスのスキーリゾート地にやって来たスウェーデン人の夫婦と家族の危機を描いてきたものです。

日本の映画とはかなり違います。

登場人物はとても少なく、夫婦の会話、子供との会話、僅かな他人の登場人物との会話が中心で、
時折、うんざりするような雪山の風景が差し挟まれて物語は進行します。

まだ若いけれど裕福な夫婦で、男の子と女の子に恵まれていて、
一見すると何の問題も無いどころか理想的な夫婦像、家族像に見えます。

しかしフレンチアルプスでのリゾートでこの主人公家族は一気に家族崩壊の危機に直面します。

この映画では、ヨーロッパのスキーリゾート地ではよく行われているのか、
爆音が時折響き渡ります。

これにより人工雪崩を起こして安全を確保している???

まあ、ともかく、この裕福で幸せな一家は、
素晴らしいアルプスの風景を眺めながら、
オープンレストランでランチをしているのです。

すると、人工雪崩の手違いで巨大な雪崩がレストランのギリギリまで来てしまうハプニングが起こるのです。

恐ろしい速度と規模で雪崩が向かって来るため、
レストラン内はパニックになります。

幸いギリギリで止まり、誰も怪我人はいなかったのですが、
この時、この家族の子供と妻は危険を察知して逃げようとします。

しかしお父さんだけは最初は余裕をかましているのですが、
ギリギリになったところで、泣き叫ぶ妻子を置き去りにして、
自分の手袋とスマホだけ持って逃げ出してしまいます。

ここから一気に夫婦の間に亀裂が入るのです。

あれこれと言い訳を繰り返す夫。

既に夫に対してもう男として、夫として思えなくなりつつある妻。

色々と夫婦の会話を繰り返します。

さらに、リゾートで知り合った人達も巻き込んで話し合いをします。

この映画には派手なアクションシーンは一切ありません。

ただし。

人の心の動きが実に細密に緻密に描写されています。

不信感。

親に対する不信感。

夫に対する不信感。

自分の夫が、自分や子供を最優先に考えなかった事実を前に、
強烈なダメージを受けている妻。

それを言い訳を駆使する事で乗り切ろうとする夫。

夫婦の愛情や親子の愛情は、家族を持つと揺るぎないものだと言う、
根拠のない妄信をするケースが非常に多いと感じます。

この映画ではその脆さを嫌と言うほど見せつけてきます。

最初はフランスの映画祭で賞を取って、
それがアメリカに知れ渡って、アメリカでも大ヒットした作品だそうです。

これはかなりの緊迫感が終始続く映画でもあります。

しかし日本やアメリカの映画とは根本的に違っています。

従って、日本作品ばかり普段から見ている人にはあまりお薦めは出来ません。

けれども男女の関係の脆さとは如何なるものなのか?

そういう事を知りたい人には大変お薦め出来る作品です。

個人的には最初から最後まで緊張感を維持しながら観られた、
実に面白い映画でありました。

終わり


余談:

日本的な感覚のみでこの映画を観てしまうと、
男の身勝手さ、醜さばかりに目が行ってしまうかと思います。

女は常に正しくて、男の問題行動で全てがダメになるのだ、と。

しかしながらこの映画においては、
さり気なく女の醜さも描かれています。

決して男だけが悪者ではなく、
打算的な女の行動、あるいは分かっていて仕掛ける悪意ある行動。

こういうのが分からないように描かれているのがヨーロッパ作品なのを感じます。


余談2:

個人的にはどうも北欧って、嫌いではありませんが、
描いてくる世界が恐ろしく暗くて、地味で、う~んと言った感じになってしまいます。

公的な調査によると毎年「自分を幸福だと思うか?」と言うアンケートに対して、常に最上位に入って来る北欧諸国です。

高度な福祉国家としても知られています。

しかし実は自殺率が結構高かったりもするのです。

気候によるものもかなり大きいとは思いますが、
映画やテレビ番組で彼らの表情を見ていると、どういう訳かあまり幸せには見えません。

笑顔が少ないと言ったらいいのでしょうか?

むしろ毎年「自分を不幸だと思う度」が先進国中最悪の日本人の方が。

案外笑顔が多い気もします。