国立演芸場(東京・隼町)の安心感と寄席の自由感について
※ これから書くことはどちらが良いのか悪いのかではありません。
どちらの利点も欠点も上手に利用して楽しめばいいと言う話であります。
久し振りに国立演芸場に行きますと妙な安心感があります。
最近の私は歌舞伎座の4階一幕見席と都内の常設の4つの寄席に通っております。
4つの常設の寄席とは、上野鈴本演芸場、浅草演芸ホール、新宿末廣亭、池袋演芸場です。
これら上記5つの施設は昔の東京、ひいては江戸の面影を残しているので自由席になっています。
もちろん歌舞伎座の1~3階の通常席は全席指定席ですが、
4階一幕見席だけは入口も出口も通常席とは別になっていて、
頑なにこの自由席の伝統を守っております。
こういう感覚に慣れてしまっておりますと・・・・・
私と娘は久しぶりに(と言っても1ヶ月ぶりくらいですが。笑)土曜日に国立演芸場に行った時、
開場の30分くらい前に着いたのですが、ほとんど人がいないのに驚いたのです。
「確か満員御礼のはずなのに何故?」と。
そしてしばらくして気付いたのであります。
「ああ、そうか。国立は指定席だから早く来る必要がなかったんだ。」と。
柳家小三治師匠がトリの時の上記4つの寄席は30分前に行ったのでは立ち見になってしまいます。
座って見るなら最低でも1時間前に行かないとダメなのです。
現代の日本社会の様々な座席に関しては指定席が普通になっておりますから、
その流れを当然のものとして思い込んでいます。
どちらが良いのかと言いますと、
「安心感」と言う一点においては間違いなく指定席の方が遥かに良いです。
しかし、この指定席と言うやつ・・・・・
もし一旦、上記の5つの施設のような時代に逆行するような自由席を知ってしまった場合。
そして慣れてしまった場合。
想像以上の「自由感」に驚くはずです。
いつでも自分の気の向いた時、自由時間が持てた時に行けばいいだけだからなのです。
例えば、今回の土曜日に行った国立名人会は指定席ですから、
7月29日(土)の回を申し込む訳です。
そうして29日が来るのを期待して行く訳です。
逆に考えると29日は確実にふさがった日となる訳です。
もっと言ってしまうと、もし何らかの緊急事態が29日に起こったらアウトになる、と。
もしこれが上記の4つの寄席だった場合は、
「小三治師匠がトリならば、都合の良い日に早目に行くか?」となる訳です。
どの日に行くのかは当人の都合次第となります。
変な話「待てよ、凄く混雑しそうだから歌舞伎にしとくか?」などと言う変更も自由自在なのです。
この柔軟性は堪りません。
しかし反面、早目に行ったつもりでも想像以上に行列していることもあります。
「座れるのかな?」と言う不安も付きまとってきます。
江戸時代とは比較にならないくらい人口が増えていて、
さらに交通機関が発達している現代の首都圏においては、
かつてとは全く違う集中の仕方をします。
従って時折、国立演芸場や歌舞伎座や国立劇場の指定席に座ると、
「あ~これは快適だ。」と思うのであります。(笑)
指定席と自由席が混在している現代の伝統芸能趣味。
実に面白いと思っております。
この自由席の文化は絶対に消してはダメだと思うのであります。
ぶらりと寄席へ。
ぶらりと歌舞伎へ。
この「ぶらり感」こそが芸能趣味の真髄なのでは?と思う今日この頃でもあります。
そしてもちろん現代ならではの指定席も混在しているのが心地良いのだ、とも。
終わり