春のバロック・コンサート ドゥ・プティ・ノト・シリーズ vol.6
2015年5月5日(火) 荻窪教会
開演は14:00だったので、せっかくならと午前中は吉祥寺美術館、三鷹美術ギャラリーに寄ってから伺いました。
三鷹は・・・私の勘違いで展示会をやっていませんでしたが。(苦笑)
それはともかく。
この日メインの出来事となるブログ友達のソナタさんのコンサートに行った次第であります。
ドゥ・プティ・ノト・シリーズは今年で6回目、荻窪教会で今のメンバーとしては4回目だそうです。
自分のブログの過去記事をチェックしたら2012年から私は荻窪教会の方は全て鑑賞しておりました。
月日の経過を感じます。
このシリーズを一言で表すなら「マニアック」と私は感じています。
そもそもクラシック音楽好きは世の中にいるようであまりいません。
その中でも古楽器を使用し、さらに昔のチューニングにまでこだわった演奏を好む人は、
少なくとも私の周囲には皆無でした。
音楽は一般的に明るい趣味ですが、非常に孤独を感じていた不思議な分野と言えるかと思います。
しかし、ブログと言う現代のネット世界はいとも簡単に私を古楽器演奏家の方々と結び付けてくれました。
開演の30分以上前から外で人が待っているのには驚きますし、
席もほとんど埋まっているのにも、世の中にはそれなりに同好の士はいるのだと楽しく感じます。
今回のコンサートを聴いてつくづく感じたのですが・・・・・
音楽とは本来、非常に刹那なものなのだ、と。
録音技術を手に入れた人類は、音楽を未来永劫続く美と考えがちですが、
その場で奏でられた音は瞬間的な美であり、高度な録音技術をもってしても、
完全な再現は無理な世界であります。
何故なら、音楽とは音だけで構築されている訳ではないからだと感じているからです。
そして思うのです。
私はこの世界を非常に好んでいる、と。
他の追随を全く寄せ付けないほど好んでいる、と。
基本的にはバッハ以外のバロック音楽をほとんど聴かない私でしたが、
演奏家の方々との交流を通じて随分と進化して来ました。
それでもまだまだ知らない作曲家、知らない曲が多い世界です。
ちなみにこういう演奏会で奏される曲は、YouTubeでも見つけるのが困難だったりします。
今回も期待を全く裏切らないマニアックさでグイグイとキてくれました。(笑)
さて、今回の曲目です。
プログラム
第1部
ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681-1767)
2本のリコーダーと通奏低音のためのトリオ・ソナタ ヘ長調 TWV42:F7
Affettuoso/Allegro/Adagio/Vivace
ジョセフ=ボダン・ボワモルティエ(1689-1755)
2台のヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ ト短調 作品10より
Allemande(Gravement)/Pesament/Lentement/Gigue(Gracieusement)
ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ(1697-1773)
リコーダー、オーボエと通奏低音のためのトリオ・ソナタ ハ短調 QV2:Anh.5
Andante moderato/Allegro/Larghetto/Vivace
第2部
ジュゼッペ・バルダッサーレ・サンマルティーニ(1695-1750)
2本のリコーダーと通奏低音のためのソナタ第1番 ヘ長調
Allegro/Adagio/Allegro
ジャック=マルタン・オトテール(1674-1763)
2本のリコーダーのための組曲 ニ短調 作品4
Gravement-Gai/Allemande/Rondeau(Tendre)/Rondeau(Gai)/
Gigue/Passacaille
ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681-1767)
リコーダー、オーボエと通奏低音のためのトリオ・ソナタ ハ短調 TWV42:c7
Adagio/Allegro/Adagio/Allegro
おそらくテレマンを除けば、そもそも作曲家名すら知らない人の方が多いかと思います。
しかしそれぞれがまた良い曲だったりするのです。
今回はバッハ、ヘンデルを大胆にも完全に外しているところがマニア度最強であるかと思うのです。
観客に全く媚びない潔い姿勢を感じます。
さて、それぞれ解説して行きます。
昨年からプログラムに無い曲を所々織り交ぜて来ます。
去年はオルガン演奏が最初にあって非常に驚きました。
今年はリコーダーソロでした。
曲名が・・・分かりません。
鳥のさえずりのような技法を使う曲でした。
クープラン???
今となっては分かりません。
録音したかった・・・・・(苦笑)
そして第1部へと入って行きます。
今回のコンサートで真っ先に感じたのはチェンバロの音色でした。
演奏の始まる前に調律していたソナタさんの音を聴いて、
そもそもソナタさんのチェンバロではない上に何とも言えない優しい音色だな~と思っておりました。
コンサートが終わってから説明してくれたのですが、
何と音を鳴らす部分が昔ながらの鳥の羽を使用しているタイプだったのです。
そもそもチェンバロと言う楽器はピアノに似ていますが、
音を出す仕組みはピアノとは全く違います。
ピアノは線(弦)を叩いて音を出す楽器です。
イメージ的には木琴とか打楽器に似ています。
チェンバロは線(弦)を弾いて音を出す楽器です。
イメージ的にはギターのような仕組みです。
その弾く部分を現代のチェンバロはプラスチックを使用していますが、
昔は鳥の羽を使っていたそうなのです。
素晴らしいチェンバロを投入して来たと思いました。
装飾も非常に綺麗でした。(写真参照)
ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681-1767)
2本のリコーダーと通奏低音のためのトリオ・ソナタ ヘ長調 TWV42:F7
Affettuoso/Allegro/Adagio/Vivace
何ともまあ優しい出だしでした。
続くAllegroは技巧的でフーガのようにも聴こえました。
緩急緩急となる典型的なバロック音楽の構成で、とても良い感じでした。
テレマン、好きです。
特に演奏会では非常に映える感じがします。
参考演奏:https://youtu.be/lpzmaT9nELg
続いて・・・・・
実に面白い趣向を仕掛けて来ました。
ジョセフ=ボダン・ボワモルティエ(1689-1755)
2台のヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ ト短調 作品10より
Allemande(Gravement)/Pesament/Lentement/Gigue(Gracieusement)
ヴィオラ・ダ・ガンバが2台だけで演奏される曲。
私が初めてソナタさんの演奏を聴いたのはチェンバロではなくヴィオラ・ダ・ガンバを始められてから最初のガンバ演奏でした。
その後はずっとチェンバロ演奏だけを聴いていました。
あれから何年も経って、久しぶりにソナタさんのガンバ演奏を聴いた次第なのです。
複数の楽器を演奏出来る人ってカッコいいと思っております。
昨年もガンバ演奏の方がオルガンを弾いて大変驚いたのです。
現代では通常のクラシック音楽の世界では失われてしまった楽器。
ヴィオラ・ダ・ガンバ。
2台で何とも言えない良い響きを聴かせて頂きました。
参考演奏:https://youtu.be/65rKsCj1j2s
ヨハン・ヨアヒム・クヴァンツ(1697-1773)
リコーダー、オーボエと通奏低音のためのトリオ・ソナタ ハ短調 QV2:Anh.5
Andante moderato/Allegro/Larghetto/Vivace
さて、ここでいよいよオーボエの登場です。
もちろんバロック・オーボエです。
この楽器、めちゃくちゃ好きなんです。
独特の優しい音色を出して来ます。
特に演奏会の場合、音が非常に映えて来ます。
Allegroの時、リコーダーからオーボエへ軽やかに主題が移って行くのが素敵でした。
Larghettoは、通奏低音のチェンバロの音が違って聴こえたのが面白かったです。
リュートストッパーを使用した???
あるいは2段チェンバロの上段を使用した???
理由は分かりませんが、リュート的な音色を出していたように感じました。
Vivaceを聴いている時、私が何故バロック音楽をここまで好むのか分かったような気がしました。
もしかして現代の音楽では失われてしまっている通奏低音をとても好んでいるから?と。
参考演奏:https://youtu.be/xSXutUuByao
ここで20分の休憩。
大抵のバロック・コンサートでは休憩を挟むようです。
非常に繊細な楽器であるチェンバロのチューニングをするからです。
今回はかなり大変そうに見えました。
そして第2部へ。
ジュゼッペ・バルダッサーレ・サンマルティーニ(1695-1750)
2本のリコーダーと通奏低音のためのソナタ第1番 ヘ長調
Allegro/Adagio/Allegro
全体的に明るく軽やかな曲でした。
AllegroからAdagioへなる時、曲が止まらずに進行して行くのが大変興味深かったです。
サンマルティーニ・・・だんだんと普通に思える作曲家になって来ました。(笑)
ジャック=マルタン・オトテール(1674-1763)
2本のリコーダーのための組曲 ニ短調 作品4
Gravement-Gai/Allemande/Rondeau(Tendre)/Rondeau(Gai)/
Gigue/Passacaille
来ました、オトテール。
これまた普通に思える作曲家になってます。(笑)
この曲自体は非常に澄んだイメージです。
おそらくはリコーダーと言う楽器のなせる業なのかも知れません。
Gai、Passacailleはバッハ的な展開も見せましたが、
リコーダーの低音がゆっくりと流れながら、高音域がスピィーディな、
何とも不思議な展開もあり面白い曲だと思いました。
時間差攻撃のようなユニークなパートがありました。
ゲオルグ・フィリップ・テレマン(1681-1767)
リコーダー、オーボエと通奏低音のためのトリオ・ソナタ ハ短調 TWV42:c7
Adagio/Allegro/Adagio/Allegro
最後の〆に再びバロック・オーボエが登場。
2番目のAllegroの動きは秀逸を極めておりました。
4番目のAllegroは非常に技巧的でスピィーディで、
駆け抜けるように曲は終わりました。
あ~テレマン、良い!!
参考演奏:https://youtu.be/ttmrVwtVCbI
そしてアンコールはパッヘルベルのカノン。
バロック・オーボエを使用したカノン。
世界で初めてかも?とリコーダーの方が説明していましたが、
確かに少なくとも私は初めて聴きました。
最後の最後にメジャーな曲をやって頂き、楽しい演奏会は幕となりました。
ともかく再確認しました。
私は古楽器によるバロック音楽演奏を最も好んでいる、と。
終わり