鋼鉄の夢

土曜の夜。

子供はもうグッスリと夢の中。

先程まで一戦を交えた妻も寝息をたてている。

私はこっそりと部屋を抜け出し車庫に向かう。

そして「バトルスーツ」に身を包む。
皮とプロテクターで作られたライダーの正装。

愛機ZZR1100を車庫から出し、
子供らが目を覚まさないよう、
家から30mほど離れた場所でエンジンをかける。

ゆっくりと住宅地を抜け幹線道路に入る。

自動車の流れに逆らわず、円滑に首都高速を目指す。

首都高速2号線に入り、ややスピードを上げ、
120~130km/hで自動車の群れをかわして行く。

C1に入り、さらにスピードを上げる。

そのまま分岐し、レインボーブリッジへ。
スピードメーターは210km/h辺りを指している。

そのまま少しスピードダウンし、
湾岸線への分岐の左カーブを150km/hで抜ける。

そして、合流車線、シフトダウンしアクセルを全開に。
スピードメーターは230km/hを指す。

そのまま一気に追い越し車線に。
タコメーターの針がレッドゾーンぎりぎりの最高出力を指した時にシフトアップ
アクセルは全開をキープ。

250、260、270、280、290km/h・・・
ドンドンとスピードは上がり、走行車線を走る車は止まっているようにしか見えない。

さすがにこの辺りではスピードの伸びが落ちる。

しかし、アクセルは戻さない。

295、297、299、301、305、310km/h・・・

そして針は320km/hを指す。

高度に設計されたカウリングのお陰でほとんど空圧は感じない。

ただただラインがビュンビュンと後ろに飛んで行くだけ。

Over300km/hの世界に突入。

何故そんな事をする?

「オートバイ・・・それは鋼鉄の夢」


参考文献 「キリン」東本昌平、「オートバイ」マンディアルグ、「オートバイ」パンタ、
     「路上を駆ける風」山川健一