一陣の風（キャンプと歌舞伎）

人のいない所でキャンプした方は経験した事があるだろうか？

例えば春の山の夕暮れ。
今まで優しい表情をしていた周囲の自然。
するとキャンプ場に「一陣の風」が吹く。

風が木々を揺らし、山が表情を変える。

突然、ひんやりとしてくる。

「畏れ」を感じる。

何か分らないけれど人智を超えた何かに対する「畏れ」。

以前、歌舞伎座で市川猿之助の「紅葉狩」を観た。
大傑作だと思った。
上記の感覚を見事に表していた。

「紅葉狩」の最中に美女が現れ、舞を見せてくれる。
素晴らしい舞と美酒と紅葉に心地良い一時を過ごす。
ふと気付くと、誰もいなくなり、
夕暮れ時、「一陣の風」が吹く。

そして・・・
と言うストーリー。

昔の人はそこに「鬼」を感じたのだろうな。

自然に対する「畏れ」。
夜に対する「恐れ」。

コンクリートとアスファルトに囲まれた都市生活をしていると、
「この感覚」を忘れてしまいがちで、
時に傲慢になるが、
本当に人のいない場所で夜を過ごす事。
これは大変な恐怖だ。