雷の恐怖

都市部で生活していると雷はそれ程怖い存在ではない。

近くで落ちたりすると確かに怖いが、
建物の中や車・電車の中にいる限り安心だ。

しかし、それがアウトドアで、
さらに山の尾根で遭遇したら、
一体どんな思いをするのであろうか?

まだ私が20代前半の頃、
丹沢の表尾根を単独で縦走した事があった。

天気予報では「晴れ」だった。

しかし、山の尾根伝いを縦走中、
急速に雲が出たと思ったら、
雹!!がいきなりバリバリバリッと降り始め、
雷が鳴り始めた。

ちょうど木の全くない岩場で、
身を隠すスペースすらなく、途方にくれた。

白状すると、目に涙すら浮かんできた。
もっと言うと「本当に死ぬ」と思った。
これほど「死」を身近に感じた事はなかった。

「こっちへいらっしゃいっ!!」と言う声が聞こえ、
よく見ると、岩場を少しはずれた土の窪みの中に、
初老の夫婦がうずくまりながら私を呼んでいた。

「どうしたらいいんでしょうかっ!?」と怯える私にその老夫婦は、
「どうする事も出来ない。ただ稜線と岩場をはずして、
うずくまっている事しか出来ないんだ。」と答えた。

普段から街中をオートバイや車で乗り回し(今でも変わらないが・・・(^^;)、
自然とはそれ程関わらずに生活していた者にとって、
また、若く傲慢だった者にとって、
自然の脅威にかくも人間が弱い存在だったと知ったのは、
大変な驚きであった。

泣きながら「祈ること」それしか出来なかった。

毎年夏が来ると、何となく思い出す出来事です。