マスコミ報道に注意!!「アクセルとブレーキの踏み間違い事故は全ての年代でほぼ均等に起こっている」
マスコミ報道に注意!!「アクセルとブレーキの踏み間違い事故は全ての年代でほぼ均等に起こっている」
昼の番組で「高齢ドライバーによるアクセルとブレーキの踏み間違い事故」について詳細に報道していた。
最近、痛ましい事故が連続してあるので、
要はこのところやたらと目にする≪高齢ドライバーけしからん報道≫だった。
この種の報道、つまり悲惨な事故や事件を大々的に扱い、連日報道する時は要注意だ。
だが、この番組ではきちんとした統計を明示してくれたため、
思わぬ事が判明した。
けれども案の定、その肝心要な点はほとんど突っ込まず仕舞いだったので、
かなり悪質であると感じた。
予め回答が用意されていて、
その主旨から外れてはならないような規制を感じる。
現在のマスコミ報道に接していると、
感覚的にこんな感じではないだろうか?
???高齢ドライバーは非常に危険で、???
???アクセルとブレーキの踏み間違いを日常的にしてしまい、???
???このお陰で数万件もの事故が起きて、死者数も数千人増えている、???
???だからけしからん、???
???さっさと免許証を返納せよ、と。???
確かに掲載した表からも、
運転中の交通事故死者における高齢者の割合が高いのは事実だ。
だがこれだけだと極めて重大な別の事実を見逃してしまう。
交通事故の実態は毎年毎年警察庁から正式に発表されている。
先ずはその全体的な数字を見てみよう。
平成30年中の交通事故死者数は3,532人だった。
この数字、実は30年前の平成元年と比較すると驚異的に減っている。
何と平成元年の死者数は11,086人だったのである。
ちなみにピークは昭和45年の16,765人で、昭和50年代に一旦1万人を切るようになったが、
平成になってから再び増加する。
平成8年くらいから以降ずっと減少を続け現在に至っている。
この死者数の減り方は理由は何であれ、明らかに統計的に有意と言える。
それなりに大きな数字を扱っているからだ。
確かに現在の交通事故では高齢者が占める割合が多くなっている。
しかし、これは当たり前と言える。
何故なら日本はこの30年で世界でも類を見ない高齢化社会になっているからだ。
周囲は高齢者だらけなのである。
実はこの高齢化社会はほぼ間違いなく、
全体的な交通事故死者数を極端に減らしている原因の1つと言える。
何故なら急速な高齢化社会と急速な交通事故死者の減少は完全に時期が一致しているからだ。
さて、ここでテレビ番組で発表されていた統計を見て、もう1つ重大な事実を考えてみよう。
2017年にアクセルとブレーキを踏み間違えて起こった事故は、
全部で4,748件だった。
そのうち死亡事故は50件。
では、この4,748件の事故における年齢別の統計はどうなっているのだろうか???
驚くべき事に20代、30代、40代、50代、60代、70代前半、
ほぼ同じ率で均等に起こっていた。
統計的に有意な差はないほどに。
ただし70代前半はやや高率になっていた。
問題は70代後半で、75歳以上になると確かに増加していた。
また、この統計は非常にクセモノなのだが、
死亡事故50件のうち、75歳以上の高齢者は何と52%だった。
強いて言えば、あくまでも強いて言えばなのだが、75歳以上になると、
踏み間違えを起こし易くなり、一旦事故を起こすと高齢ドライバーは死亡事故に至り易いと言えなくもない。
だがこの数字をよくよく考えてもらいたい。
ここで私が高校生くらいの頃に朝日新聞に非常に大きな不信感を抱いた体験を書いてみたい。
当時私はオートバイが大好きになり楽しんでいたのだが、
ある日、朝日新聞の記事を読んで驚いたのである。
オートバイは右だか左だかのカーブが苦手、と結構大々的に報道していたのである。
そんな事初めて聞いたのでオートバイ乗りとしては高校生と言えどもビックリ仰天した。
そこで詳細に読んでもう一度ビックリ。
この統計と言うヤツが首都高速で発生したオートバイのカーブ中の事故10件くらいで判断していたのである。
確か右が6件で左が4件とか、そんな数字だったのである。
まさか大新聞がこんないい加減な報道をするとは夢にも思っていなかったので、
高校生ながら大変な不信感を朝日新聞に抱いたのを覚えている。
ここで先ほどのアクセルブレーキ踏み間違い死亡事故件数を再チェックしてみよう。
50件。
統計としては数字が小さ過ぎるのは言うまでもない。
この数字だと数人の差で年代別パーセンテージを数10%変化させてしまう。
ともかくはっきりと番組で挙げられた統計的に有意な数字から言えるのは、
どの年代でもほぼ均等にアクセルとブレーキの踏み間違いをしている、と言うものだった。
75歳以上になると確かにある程度増えてはいるけど、と。
さて、ここで以前テレビで見た実験結果をご紹介したい。
アクセルとブレーキの踏み間違いは実は心理の専門家によると結構簡単に起こせるらしい。
その実験を以前テレビで見て驚いたのである。
バックを開始した途端に携帯電話を鳴らすのである。
ただそれだけ。
すると10人中、数人のドライバーが踏み間違いを起こしていた。
その理由はちょっと忘れたが、
何となくこの感覚は理解できるかとは思う。
上記の結果からも、アクセルとブレーキの踏み間違いはどの年代でも起こりうるのである。
ちなみにテレビの統計では、20代が結構高かったのが意外で驚いた。
(僅かな差ではあったが。
テレビを見ながらのメモだったので、細かい数字までは書き取れなかったのは失礼)
一番低いのは50代だった。
昨今、高齢ドライバーけしからん報道が凄い。
確かに認知症問題もあるし厄介ではある。
だが冷静に統計的な数字を見て判断したい。
報道を過熱させてしまうと本当に危険な本質を見逃してしまう。
終わり
余談:
悲惨な通り魔殺人事件にも同じ事が言える。
被害者におかれましては大変お気の毒ではあるのだが、
実は通り魔殺人事件に巻き込まれて死ぬ確率と言うのは、
極めて低い現実がある。
はっきり言うと宝くじの1等に当たるのと同じくらいになってしまう。
(統計的にはほぼ有り得ないくらいの確率になる)
だがマスコミの過熱報道に接していると殺人事件が異常に増えていると錯覚してしまう。
実は殺人事件の発生件数。
前述の交通事故と同様に警察庁が正式に発表しているのだが。
昭和時代は4000人以上発生していたが、
現在は700人台まで減少しているのである。
つまり現在の日本は交通事故としても殺人事件としても、
以前と比較すると信じられないくらい安全になっているのだ。
歴史的にも最も安全な時代と言っていいだろう。