夫が妻を殴る時 映画「宗方姉妹」小津安二郎監督

映画「宗方姉妹」小津安二郎監督作品を鑑賞した。

小津映画にしては珍しく夫が妻を叩くシーンが出てきた。

原作は大佛次郎

この映画は、ある夫婦の破局の物語と言える。

姉(田中絹代)は結婚していて、妹(高峰秀子)も同居している。

夫(山村聡)は現在は職がなく妻がバーを経営して何とか生活を維持している。

妻は古いタイプの日本の女で、
そんな夫でも一所懸命「仕えて」いる。

妻の父親(笠智衆)も夫の無職を心配している。

無職になってからというもの、
夫は妻に辛くあたり、そんな姉の様子を見ているモダンな妹はどちらにも我慢がならない。

妻には、実はその昔、好きな人(上原謙)がいた。

結果的にその人とは結婚できないで、
現在の夫と一緒になった経緯がある。

夫は随分と昔からその事実を知っていた。

だが何とか上手くやって来たのだが、
妻の本心を知っているため、無職になった途端、
一気に今の生活が嫌になっている。

だが妻の事は嫌いではない。

むしろ愛している。

そうしてバーの経営が立ち行かなくなった時、
その昔好きだった人にお金を都合してもらえ危機を乗り切ることが出来た。

夫はそもそも妻がバーで働くのを望んではいない。

しかし得られない職。

勝手にしろ、と言っていたが、
好きな男から援助してもらったと知りとうとう爆発。

「何故オレに黙っていた!!」と。

そしてとうとう離婚を切り出す。

すると妻は言う。

「何で私が今まで一所懸命頑張ってきたと思うのですか!?」と。

見事なまでの古い日本の耐える女を演じていた田中絹代

途端に夫は妻の頬を叩く。

何度も何度も。

「オレはそんなオマエが嫌なんだ!!」と。

酷いと叫ぶ妹。

呆然としている姉。

ほとんどの女性はここで酷い夫を持った可哀想な妻と言う視点で観ると思う。

確かに暴力はいけない。

だが、それまでの偽りの日々の罪はどこにあるのだろうか???

女の側ではないのだろうか???

まあ昔は望まないお見合い結婚は非常に沢山あったとは思う。

そして実際、映画ではその後、離婚は了承されたと思い、
かつて好きな人と一緒になろうとする場面に変わる。

そこに夫が登場。

結果的に夫は身をひく形となるも、
その夜、深酒をして戻って来た挙句に心臓麻痺で死んでしまう。

自殺を疑う妻ではあったが、
取り敢えず、再婚の話は進んで行く。

しかし結局は夫に悪いと思うと言う意識から再婚を諦める。

そこで映画は終わった。

実のところ、最近の私は「女性は想像以上に攻撃的である」と思っている。

特に日本の女性は上手に被害者を演じてくる。

この映画でもそうだった。

だが間違いなく夫を追い詰めていたのは妻の側だ。

偽りの微笑み。

偽りの服従

偽りの愛。

それらを全て見抜いていた夫。

かなり憐れな映画だと思った。

さすがに小津安二郎監督。

終わり