帰宅難民の勘違いについて

テレビを点けたら偶然池上彰氏の災害対策特集番組やっていたので、
途中からだったけれどそれ以降は全部見ました。

最新の色々な災害対策を知る事が出来て、
なるほどと感心していたのですが、
1つだけアレレ?大丈夫かな?と思ったので記事にしたいと思います。

それは帰宅難民についての解説でした。

3.11の時は震度5強の揺れで、さしたる被害が無かった首都圏ですが、
全ての鉄道が止まってしまいました。

そうして前代未聞の帰宅難民が道路と言う道路に溢れ、
自動車も有り得ないほどの超大渋滞したことは知られています。

今まで体験した事の無い事態だったため、
鉄道会社は駅を閉鎖してしまい、人々を締め出したのも悪化させた原因の1つでした。

そこで現在では、駅を解放したり、災害に強いガソリンスタンドを避難所にしたり、
また職場では3日分の食料と飲料水の備蓄をして、
会社に泊めて帰宅難民を出さない努力をしています。

このこと自体はとても良いのですが、
残念ながら番組では「その先」については全く報じられませんでした。

「その先」を報道しなかったのはかなり痛いです。

何故なら最も肝心要な事だからです。

そもそも3.11を首都圏で体験した人達は、
「その先」をまるで考えていません。

震度5強の揺れでしたが、全て止まった鉄道は翌日にはほぼ全てが運行を再開しています。

そのため余り深く考えていない人は「鉄道は翌日復旧する」と思い込んでないでしょうか?

都市型の大地震であった1995年の阪神淡路大震災の時はどうだったのでしょうか?

もちろんあの近辺の鉄道は全部止まったのは言うまでもありません。

しかしながら、早い段階(翌日)で、被災地を除いた場所では折り返し運転を開始していました。

また代行バスの運行も開始されていました。

ところが全面復旧は何日後だったのでしょうか???

被災したJR神戸線ではなんと「74日後」です。

つまり、代行バスの運行などがあるにしても、
3.11の首都圏で発生した帰宅難民数は515万人と言われていますから、
一度に何千人も乗せられる電車ではなく、
せいぜい1回の乗客が100人くらいが限界のバスの代行ではとても間に合いません。

さらに「そもそも道路も被災します」。

つまり電車も道路も被災した場合は、
「翌日でも帰れない」と考える方が当たり前です。

震度6強~7に襲われた場合、2日後でも先ず無理と考えるべきです。

3日後でも同じです。

倒壊したビルや電柱で道路は寸断され、
さらに火災も発生します。

このような状況では、普通に考えれば。

「待っていても帰れない」のは自明の理です。

ではどうしたら良いのか?と言いますと、
もちろんこれは各自が抱えている事情により非常に大きく変わってきます。

独身者で子供がいない場合は無理に帰る必要はありませんから、
会社に泊まるのも全然OKでしょう。

ただし、3日したら食料も飲料水も底を尽きます。
(職場に3日分の食料と飲料水があると仮定した場合です)

また首都圏の場合、既に言われていますが、
被災者数が桁違いに多くなりますから3日で救援物資が届くことはありません。

番組では1週間かかると言っていました。

つまり震災と言う状況下で会社に留まり続けるのは無理があるのです。

繰り返しますが、鉄道はそう簡単に復旧しません。

会社に1泊は賢明な手段ですが、
それ以降はどうするべきなのか???

この視点が欠如している災害対策は意味がありません。

小さな子供がいる家庭では一刻も早く親は帰る必要があります。

自分の家庭事情、自宅から職場の距離、被災状況、季節、装備、体力等々、
色々な事を考慮した上で決断する必要があります。

この決断は誰でも同じと言う訳ではありません。

しかしながら会社の備蓄食料及び飲料水の自分の分が後2食分になった段階で、
まだ救援物資が届いていなければ、
何らかの行動を起こさない限り事態は打開できないのは明らかです。

これが底をついたらアウトです。

もうこの段階で長距離の歩行は無理だと考えるべきでしょう。

ちなみに20~30kmの歩行を体験したことがありますでしょうか?

当ブログでは何度もその体験を記事にしておりますが、
私は夏場はやっておりません。

いずれも春、秋、冬の暑くない時に実行しています。

それでも2リットルの飲料水は全て飲んでしまうほどでした。

夏場はこんなもんじゃ済まないのは明白です。

他に食料が1~2食必要なのは言うまでもありません。

また、靴も非常に重要です。

革靴で被災した道路を20~30km歩くのは無理と考えた方が無難です。

最低でもスニーカーを調達する必要があります。

ちなみに知り合いの家族(大人の健康な男性)が3.11の時、
都心部から徒歩で革靴とフリースと言う格好で横浜市の自宅に戻ろうとした時、
鶴見近辺で身動きが出来なくなってしまいました。

普段から登山をやっている人は大丈夫でも、
鍛えていない人には無理です。

まして革靴では。

ちなみに3.11の首都圏では歩き通せた人も、
本当に被災した時に歩けるとは限りません。

私はあの日ハイヒールでも歩き通せたなどと言っても通用しません。

あの時は道路に散乱したガラスも無ければ、
倒壊したビルも火事も無かったのです。

それほど帰宅難民の問題は非常に難しく、
各自の事情にも関わって来ますから、
普段からの装備と体力の維持、家庭内での連絡体制をきちんと考えておく必要があります。

終わり



余談:数の恐さ

例えば六本木ヒルズ

ここは自家発電装置を装備していますので電力制限を受けません。

つまり被災時でも停電する可能性は極めて低い場所です。

さらに何と10万人分の食料と飲料水の備蓄をしています。

六本木ヒルズ側は、被災時には住民だけでなく、
ヒルズに訪れている人達にもこの備蓄食料等を与えると言ってくれています。

この事自体は大変素晴らしいとは思うのです。

しかし。

昼間の六本木ヒルズの人口は何人なのかご存知でしょうか???

昼間人口は約5万人。

来客移動人口は1日約30万人。

つまり、下手をすると1人当たり1食分くらいにしかならないのです。

これが数の恐さです。

10万食あっても10万人いたら1人1食。

決して高度な備蓄とは言えなくなってしまいます。

3日分にすらなりません。

さて、そこで考えてみましょう。

首都圏の被災とは何を意味するのでしょうか???

そもそも東京、千葉、埼玉、神奈川の首都圏の人口は何人なのでしょうか???

はい、3500万人です。

もちろんこの全員が被災すると言う訳ではありません。

しかしながら。

3日で救援物資が届くと考えている方がどうかしています。

事実、今、それは無理だと各自治体は認めているのです。