これから書くことは、西日本の大豪雨被害について、
あくまでも1人の素人としての疑問を呈することにより、
エキスパートエラーを防ぐ目的で記します。
そのため、大きな間違いもあるかも知れませんが、
重大な疑問を呈し、
専門家のほとんどが指摘している実行不可能な事を指摘する次第です。
今回の大豪雨被害では、
早い段階から気象庁が「今までにない豪雨」とか「身を守って下さい」と言う、
非常に強い表現で危険を知らせてくれていた。
しかし結果として現段階でも120人を超える死者が出ている。
このような大災害はかつて経験した事がない種類だったのもあるかと思う。
しかしもう1つ、絶対に見逃してはならない事がある。
それは「豪雨の最中の避難は不可能」と言う事実だ。
私達は、専門家も含めて安易に「素早い避難を」と呼びかける。
しかし、よ~く今一度考えてもらいたい。
大災害を前にした時「素早い避難が出来るのは大人の男の健常者だけ」と言う冷徹な現実がある。
女性、お年寄り、子供、病人は避難そのものが難しい現実があるのを見逃している。
ここで日本人の人口分布を見てみよう。
日本人全人口の約半分、つまり50%は女性だ。
25%は65歳以上の高齢者だ。
12.8%は15歳未満の子供だ。
さらに大勢の病気の人がいる。
つまり、世の中の多くの人達は「素早い避難が出来ない」と言う冷徹な現実があるのだ。
そして大災害の犠牲者はお年寄り、子供、病人、女性から多数出る現実がある。
でも何故か多くの人が災害を語る時は大人の男の健常者目線で語る。
大人の男の健常者とは社会構成で見た場合、むしろ少数派になってしまうのに。
小さな子供を抱えたお母さんが豪雨の中、迅速な避難は出来たのだろうか???
超高齢化社会の日本で、65歳以上の高齢者が25%を占める日本で、
素早い避難が豪雨の中で出来るとでも???
ここで誤解して欲しくないのだが、
私は避難をしなければいい、などと主張している者ではない。
大災害における防災や避難行動を考える時、
大人の男の健常者視点での警告は全く意味をなさないと主張したいのである。
何故なら、大災害の犠牲者は前述したように避難したくても出来ない者が多い現実があるからだ。
素早い避難を、と聞く度に「何を無理な事を要求しているのだろうか?」と思ってしまう。
こういう事を言う人は社会的弱者を全く考慮していないと感じている。
こんなのは、身内に高齢者や小さな子供を抱えた事のない者の戯言にしか聞こえない。
実際にテレビでは運良く避難出来た家族へのインタビューをしていた。
やはりと言うか、若い男性を中心にした親子は早い段階で避難出来て助かっていた。
しかし高齢の親は結果的に避難しなかった。
家はメチャクチャになったが、そのご家庭では運良く犠牲者は出なかったが、
最後まで避難をしなかった高齢の親。
果たしてどうすべきだったのか???
その助かった若い男性は非常に貴重な意見を言っていた。
「私は運良く助かったけれど、変に他人を助けようなどとは絶対に思わない方がいいと思った。
ともかく自分と家族だけでも真っ先に逃げる。
ダメだと思ったら助けない。
自分が助かって生きていれば後は何とかなってくれる。」
少なくとも、豪雨の中、高齢者を避難させる事は不可能と考えた方がいい。
また、頑固な高齢者と言う存在も多い。
簡単に説得できるなどと思わない方がいい。
アメリカの某ハリケーンで典型的な事例がある。
退役軍人の丈夫な老人のケースだったらしいが、
家族の再三の警告にも応じず逆ギレする始末だったらしい。
過去の事例から高潮を防げると考えていたらしいが、
この何十年で宅地開発があり、防潮堤の役を果たしていた湿地帯が消失していて、
結果的にその老人は死んだ。
こういうケースをどのように扱うべきなのか。
もちろん理想を言えば、雨の降っていない段階での避難となるが、
それは今回のような初めての大災害では無理だったと言うべきであろう。
しかし、小さな子供、高齢者、女性がいる家庭では普段から、
大人の男の健常者目線ではない避難方法を考えて対策をたてておけば、
(大人の男の健常者の)傲慢目線での避難警告とは異質の実用的な避難行動が出来る。
しかしテレビでは相変わらず「素早い避難を」としか言わない。
この表現は間違ってはいないが間違っていると言う難しい言葉だと思う。
はっきり言ってしまうと「大人の男の健常者目線での災害対策は百害あって一利なし」だ。
むしろ犠牲者を増やしてしまう恐れすらある。
繰り返しになるが、犠牲者とは非大人の男の健常者から多発するからだ。
終わり
追記:
ここで、当ブログでは何度も書いているが、
大人の男の健常者でも非常に危ない「正常性バイアス」について再度書いておきたい。
私達は大災害を考える時、パニックが危険と思い込んでいる。
大勢の人が泣き叫びながら走り回っているアレである。
しかし最近の研究ではパニックは滅多に起きないことが分かっている。
むしろ非常に恐いのは「正常性バイアス」である、と。
これは大災害を前にした時、その現実を受け入れられず、
日常の行動を遂行しようとする心理だ。
例えば、阪神淡路大震災の時、瓦礫の山の中、
線路沿いを「通勤しようとしている背広姿の男性多数」が目撃されている。
つまり、大地震と言う現実を受け入れられず、
出勤して会社で働こうと言う行為。
また、韓国で起きた地下鉄火災でも、
煙が漂ってきても逃げようとしない乗客の様子がカメラで記録されている。
こう言った正常性バイアスはパニックよりも遥かに恐いとされている。
今回の未曽有の大豪雨でも、正常性バイアスは見られているようだ。
追記2:
正常性バイアスと並んでもう1つ。
「凍りつき症候群」と呼ばれているものも恐い。
東日本大震災の時に、津波が迫って来ているけれど、
悠然と歩いている人が多数目撃されている。
これは「凍りつき症候群」と呼ばれているもので、
現実を受け入れられないほどのショックを受けた時、
人は凍りついてしまい、身動きが出来なくなってしまうと言う。
助かった人達に後から話を聞くと、
自分では全速力で走っているつもりだった、とか、
走りたくても足が前に出なかったと証言している。
これらについての対策としては、
「正常性バイアス」「凍りつき症候群」と言うのがあるのだ、
と知っておくだけでも結構な対策になると言う。
恐い問題だと思う。