天体撮影は快晴でもダメな時がある件

皆既月食の写真をアップしたところ別のSNSで、
すごく綺麗に見えるけれども、これでもダメなの?と言う有難いお尋ねがあったので、
天文趣味人以外には意外にも知られていない天体撮影における基本を改めて書いておきたいと思います。

天体撮影は、もちろん晴れていないとダメなのは分かるかと思います。

しかも普通の晴れでもダメで雲一つない快晴こそが一番である、と。

しかしこれだけでも全然不十分なのであります。

快晴の上にさらに以下の2つの要件を満たしていないといけないのです。

・シーイング

・シンチレーション

この2つです。

シーイングとは、見え方を意味しています。

こんな感じです。

良く晴れていますが、埃や公害の煤などが大気中に含まれていたら天体は霞んで見えてしまいます。

あるいは都市部だと光害のため星はほとんど見えません。

こういう状況を「シーイングが悪い」と表現します。

春先に黄砂が飛んで来て見え難くなるのもシーイングが悪い典型例です。

続いてシンチレーション。

これは天文用語になると「星のまたたき」を意味しています。

例えば首都圏の市街地の真冬の非常に良く晴れた夜に星を見ると、
綺麗に輝いていますがチカチカと瞬いているのが分かるかと思います。

この状況は、大気は綺麗に澄み渡っているのですが、
大気の流れ、つまり風が非常に強く、そのため星が瞬いてしまう、と。

もちろん大気にはジェット気流など常に動きがありますから、
この流れがゼロになることはありません。

しかしこれは程度問題で、上空低空を問わず風の流れが強い時があります。

こういう時を「シンチレーションが悪い」と言う表現を天文趣味人はしてきます。

ちなみに今回の皆既月食は、横浜地方では皆既まではほぼ快晴でした。

シーイングはとても良かったです。(横浜地方の光害は除くとして。苦笑)

しかしシンチレーションが非常に悪かったです。

この感覚は天体望遠鏡で拡大した月面を見ると非常に良く理解できます。

ユラユラと陽炎のような状態になっていて、
像がクリアにビシッと見えないのです。

天体撮影の世界はなかなかに手強いです。

こんな感じでしょうか。