数日前に留学中の娘からLINEが来て大変焦りました。
その時の事件について書いてみたいと思います。
娘はその日、大規模な郊外のコンサートに行きました。
とても寒い場所で行われて、日本でも報道があったようですが、
低体温症で救急搬送された人が結構出て大騒ぎになりました。
会場にいたほとんどの人は余りの寒さに耐え切れない状況だったようです。
娘からは「手が動かなくなっている」とLINEが入った後、
通信が途絶えてしまったのであります。
私はまさかそんな事態になっているとはつゆ知らず、
娘自身も会場の危険さを知ったのは後からだったほどなので、
私からは「一刻も早く離脱して帰宅後、身体を温めろ」とアドバイスしただけでした。
しかし実際の現場は相当酷い状況だったようです。
幸い私の娘は、後述しますが、装備がほぼ完璧だったため無事帰還できました。
さて、一般的に都市で生まれ育った人は自然に対して非常に甘い考えをしています。
その甘さは、地方在住の人には信じられないほど愚かに見えるはずです。
特に危険なのは寒さに対する考えです。
真冬のスキー場にノーマルタイヤでのこのこやって来る超危険な都会人は有名ですが、
その場合でも、タイヤチェーンは間違いなく装備しています。
また、スキーと言うウィンタースポーツのための装備と、
自動車のため、基本的にはまあ何とかなります。
自動車はシェルターとして最も有効で偉大なツールであると思っております。
吹雪になって埋まってしまうような事態なら話は別ですが。
けれども外国や、日本でも自動車無しのアウトドアの場合、事態は最悪になります。
典型的な一例を挙げておきたいと思います。
私は天体観測を趣味とするため、
その種の装備はぬかりありません。
天体観測は山でやるものなので、
例え夏でも2000m級の場所に行った場合、
どのような気温になるのかを知っております。
昔、晩秋にある山に行った時のこと。
一緒に行きたいと言った友人を2人連れて行きました。
1人は山岳部に入っていたヤツなのでまるで問題はありませんでした。
もう1人は超都心の生まれ育ちでアウトドア度が異様に低いヤツでした。
彼には「真冬の格好プラスアルファで来いよ。ダウンジャケット、手袋等々必需品だぞ。」と。
しかし彼は私の言う事を全く聞いていませんでした。
ジャンパー1つで来てしまったのです。
自動車に乗る時、
「おいっ!!それじゃダメだってっ!!」
と警告したのですが全く聞き入れませんでした。
「大丈夫だって!!」と逆切れする始末。
現地で自動車を降りた途端。
余りの寒さに驚いていたようです。
山岳部だったヤツは用意していたダウンコートを着て寒さに対抗していました。
もちろん私も耐寒装備を取り出して観測を始めたのですが。
彼は1時間もちませんでした。
「ダメだ。こんなに寒いとは思わなかった。自動車の中にいる。」と言って引きこもってしまいました。
若かったのと、私もちょっと頭にキテいたのでそのまま放置していました。
結果的に、自動車の中でも相当寒かったようで、
「泣きながら耐えていた」と後から言ってました。(笑)
実はこの事例、1件だけの話ではないのです。
他に数件あります。(苦笑)
私と一緒に天体観測に行ったことがある都会育ちの者は結構このような目に遭っているのです。
以前にも書いたことがありますが、
もう1つの典型的な事例を挙げます。
それは私の父とその友達の話です。
私の父は旅を軽装で行くのを良しとするタイプでした。
父の友達も父の影響でそのようにしていました。
あれはギリシャからポーランド航空に乗って、
ワルシャワ、モスクワ経由で日本に向かった時の真冬のことでした。
その時、ロシアには大寒波が来ていて氷点下42度になっていました。
ワルシャワで確か氷点下20度くらいだったと記憶しています。
父は「もう日本に帰るだけだから身軽になる」と言って、
コートをスーツケースに入れて預けてしまいました。
父の友達もそうしてしまったのです。
私や母や妹は真冬のワルシャワ、モスクワを通過して行く訳ですから、
もちろんコートを用意して搭乗したのは言うまでもありません。
ワルシャワに着いた時、当時の共産圏だった時代です。
あろうことか、氷点下20度くらいの中、
外でバスを待たされるハメになってしまったのです。
バスはなかなか来ません。
この時、父とその友達は普通の背広形のジャケットだけの格好でした。
みるみるうちに唇が紫色に変色し、
全身胴震いが始まっていました。
軽装と言うのは、寒さに対しては致命的です。
幸い、その後直ぐにバスが来てくれたので事無きを得ましたが、
一歩間違っていたら救急車コースだったのは確実です。
私は、旅をする時、他人(一般的日本人)から笑われるくらいの重装備を常にしています。
私の娘と一緒に旅をする時もこのスタイルを崩しませんでした。
いつしか私の娘は私以上に装備をするようになっていました。
今回の娘の装備は「ほぼ」完璧と言えるものでした。
何故「ほぼ」なのかは後述します。
寒さへの装備で一番大切なのは実は下着類であるのは今や常識になっています。
吸湿速乾性でヒートテックのようなものでないとダメなのです。
ここがしっかりしていないとアウトです。
その上でしっかりと着込み、最後の外側はダウンコートにしないとキツいです。
娘はそのようにしていました。
もちろん(問題の)使い捨てカイロも持参していました。
けれども、それでも寒かったのです。
風が強かったからです。
アウトドアで気温が低く風があった場合、それは非常に厳しいです。
それでもそれだけの装備があったから何とかなった、と。
ちょっとホッした次第です。
ちなみに、これは天体観測をする者にとっては常識なのですが、
案外知らない人が多いので、私の妹が体験した話をしたいと思います。
前述した「ほぼ」の説明です。
それは「使い捨てカイロ」のことです。
使い捨てカイロは携帯に便利ですから、
寒がりの必需品です。
ところが、なのであります。
これ、本当に寒い所だと効果は非常に小さくなってしまうのです。
使い捨てカイロは人の体温に反応して温かくなる仕組みなのですが、
当然、肌に直接触れさせてはいけません。
そこで袋に入れたり、服に貼り付けて使用しています。
私の妹がパリに行った時のことでした。
寒波が来ていたらしく恐ろしく寒かったので使い捨てカイロを貼ったのですが、
ほとんど効果が無かったと述懐しています。
外気温が非常に低い場合、
肌とカイロの間には当然布があり遮断されていますから、
カイロが反応し難くなってしまうのであります。
天体観測、特に天体写真をやる人は、
カメラの露を防ぐためにカイロを使用しますが、
使い捨てカイロは使えないのを知っています。
(念のため。カメラレンズや望遠鏡は外気温と同じになりますから使い捨てカイロは反応しない)
従って、彼らは皆、昔ながらの燃やすタイプのカイロを使います。
私ももちろんいくつも持っています。
カメラレンズや望遠鏡のレンズを露から守るために装着させるのであります。
そしてこのカイロは自分の防寒にも大変役に立つのであります。
とても温かく、長持ちします。
真冬のアウトドア活動が好きな人には必需品かも知れません。
最後に自動車について述べておきたいと思います。
逆に暑い話になりますが。
アウトドア活動において、自動車ほど有難い存在はないと思っています。
寒い場所でも暑い場所でも無敵の威力を発揮してくれます。
様々な装備を積み込めますので、自動車に装備さえあれば何とかなります。
ところが、それを破壊されたイベントがあり、
悲惨な目に遭わされた人が続出した事件がありました。
それが「愛・地球博」でした。
これは愛知県のかなりな田舎で行われたイベントだったのですが、
ヨーロッパで導入されている「パーク&ライド方式」と言う、
日本では最悪の事態を招いてしまう方法をヤってしまったのです。
これは、会場からかなり離れた場所に駐車場を作って、
そこからバスで客をピストン輸送すると言うものです。
周囲には空いた土地が沢山あったのに、
わざわざ嫌がらせとしか言えないような悲惨な方式を採用したのであります。
元々、ヨーロッパの都市で歴史的建築物を守るために考案されたもので、
自動車の流入を制限して、自動車利用者には市街地では公共交通機関を利用させるものです。
ところが何故、愛知県の田舎で、土地が余っている場所でパーク&ライド方式を???
愚かとしか言いようがありませんでした。
人口が集中する夏の日本です。
結果としてどうなったのか。
新聞や週刊誌でも盛んに報道されておりましたが。
会場内で倒れ込んでしまう人が続出しました。
それはそうです。
真夏の暑い盛りのイベントで、恐ろしい数の人が集中しましたから、
当然、駐車場からのピストン輸送のバスは直ぐにパンク状態。
バスに乗るまでに2時間以上待ち。
会場に着いてからまた2時間くらい待たされます。
私が行った時は、熱中症で目を白目にしている赤ちゃんが出てしまい、
親が血相を変えて救護所に連れて行くのを目撃したほどでした。
この時、私の取った措置は。
朝早く(早朝)に到着していたのですが、
会場に入れたのは昼近くになっていました。
「帰る」でした。
その時点ならば、駐車場までは直ぐに戻れました。
危険と判断してそれ以上の行動を中止しました。
結果的に「愛・地球博」は会場に入ってものの30分くらいで帰ると言う選択をしたのです。
これは今でも「大正解の判断」だったと思っております。
日本でヤるパーク&ライド方式ほど愚かなものはない、と今でも思っております。
その点、アメリカの施設はディズニーリゾートを筆頭に、
自動車を非常に上手に利用できる便宜を図っていると感心しています。
行く場所の気候や季節、サービス体制と自分の装備と。
危険と言うものは想像以上に身近に存在していると思うのであります。
終わり