音楽を知る時

多くの人にとって音楽を本当の意味で知るのは実のところ非常に難しいと思う。

音楽大学に進んで特別な教育を受けない限り理論的に理解するのは極めて困難と言える。

とは言え、聴くことは簡単だからほとんどの人は音楽に親しみをもっている。

けれども楽器の演奏となると一気にハードルは高くなってしまう。

中学生になると男子の多くはギターを手にするかと思う。

ギターが弾けると非常にカッコいい上に安価で買えるからだ。

そこで親に頼んでギターと教本を買ってもらい、
独学で学び出す者がほとんどだと思う。

最初に学ぶのは「C」だとか「D」などの和音を学ぶ。

普通の中学生にはこれが一体何なのかは大抵分からないままだと思う。

これはコードと呼ばれるもので何やら大切なものなんだな、と。

そしてともかく指の押さえ方と音の出し方を知る。

きちんと左手で弦を押さえられて音を出せた場合、如何にもなギターの音が鳴り、
初心者にとっては大きな喜びとなる。

だが、これまたほとんどのギターを習い始めた者にとってはここまでとなる。

おそらく95%以上のギターは押し入れの奥にしまいっぱなしになり朽ち果てて行く。

何故なら。

「F」が登場するからだ。

初心者にとって「F」の音を出すのは至難の業になる。

これがクリア出来ない限りギターは絶対に弾けるようにはならない。

そしてギターと言う楽器は最も習得が難しい楽器の1つであると知る。

だからほとんどのギターは朽ち果てる運命にある。(苦笑)

しかし運よく「F」をクリアした男子は、その後のモテる運命の切符を半分手にしたようなものだと思って間違いない。(笑)

はっきり言ってギターを上手に弾く男ほどカッコいい存在はない。

目の前で上手に弾かれてみなさい。

背筋がゾクゾクっとする。

音楽の威力とは全ての芸術、否、全てのモテる技術の頂点に君臨しているのだ。(笑)

さて、CだとかD、そしてFを学んだ後にEマイナーだとかAマイナーだとかが出て来る。

このマイナーと呼ばれる和音。

鳴らしてみると何とも言えない悲しい響きがする。

ちょっと根暗の男子にとってマイナーの響きはとても魅力的に感じるはずだ。

レッスンが進むうちにアルペジオ奏法が出来るようになると、
自分の押さえた和音を分散させながら一定のリズムで音が出せるようになる。

そして音楽とは旋律と和音と調により構成されているのだと知る。

ここに至ってギターを捨てなかった男子は一気に音楽とは何なのかを知ることになる。

学校の音楽の授業で学んだ退屈な内容。

それがここで一気に顔を出し、今まで習って来たものが何だったのかを知るのだ。

ハ長調だとかホ短調だとか。

自分が一所懸命ギターで鳴らせるようになった「C」とはハ長調のことであり、
「Eマイナー」とはホ短調である、と。

多くの根暗なギター男子にとってはEマイナーとAマイナーこそが実に簡単に音が出せながらも暗くて良い響きであるのを既に知っている。

クラシックも聴く男子はここで改めて音楽を聴くようになる。

CDに付属している音楽の説明書を丹念に読む。

すると今までは気にもしなかった調がとても気になるようになる。

J.S.Bach パルティータ第3番 BWV 827「イ短調

ああ、この響きはAマイナーだったんだ、と。

そしてそれはイ短調のことなんだ、と。