シンコペーション
中学の時、音楽の先生が大嫌いだった。
何もかもが気に入らない。
そんな感じで授業を受けていた。
しかし。
私は芸術やアカデミックな事が大好きな親の手により、
幼稚園児の頃には既にクラシック音楽を好むような聴覚にさせられていた。
中学時代は皆がロックを熱心に聴いている時も一番好きな音楽はクラシックで、
それは未だに全く揺らいでいない。
そんな訳で大嫌いな音楽教師であっても、彼女が何かの拍子にピアノを弾き始めた時、
私の聴覚は彼女の奏でるスケルツォの一音すら聞き漏らすまいと無意識のうちに集中していた。
そんなある日の授業の時。
先生は「シンコペーション」について説明を始めた。
もちろん私の耳は自動的に先生の説明を非常に注意深く聞き取り、
理解しようと必死になっていた。
今でもよく覚えている。
その大嫌いな先生は「タタンタ、タタンタ」と言うリズムを口ずさみ、
私達にシンコペーションを理解させようとしていた。
結構な音楽好きでもその説明と理解は難しいと思う。
あれから何十年もの月日が経過している。
私はその後の人生で、18歳の頃からバッハの音楽をとても好むようになっていた。
中でもバッハ最強のケーテン時代の最高傑作群の1つ。
ブランデンブルク協奏曲第6番第3楽章を非常に好んでいる。
流麗かつ独特のリズミカルな音楽。
ある時、ふと気付いた。
ああ、このリズムはシンコペーションだったのか、と。
私の聴覚はシンコペーションをとても心地よく感じることに改めて気付かされた。
大嫌いな先生ではあったが・・・・・
ちょっとは感謝している。(笑)
終わり