映画:ある結婚の風景
映画:ある結婚の風景
監督:イングマル・ベルイマン
この映画は1974年に公開されたもので、
実に293分もの長さになっています。
スウェーデン映画で、6話から成り立っています。
一貫して一組の夫婦のストーリーです。
大袈裟な表現をしますと。
・40歳未満視聴禁止
・男女間の問題を過去に経験しなかった者は視聴禁止
・日本のドラマやアメリカ映画が好きな人は視聴禁止
それくらいインパクトがある典型的なヨーロッパ映画であるかと思います。
そしてこの映画は中高年やもっと言うと老人が過去を振り返った時、
男と女の関係について一体何だったのか?あるいは何故未だにこれほど悩まされるのか?と、
深く考えさせられてしまう内容であると思います。
実のところ、上記に挙げた条件がクリア出来ていない人がこの映画を観ても、
何も感じないどころか退屈極まりないと思います。
全編、ほとんどこの映画には動きがありません。
多分80%くらいは、主人公夫婦の会話だけです。
俳優の表情と言葉だけで成り立っている映画と言っても過言ではありません。
これは間違いなく日本やアメリカでは絶対に撮れない映画です。
夫婦の問題の極限にまで迫って行きます。
上記の条件を全てクリアしている者だけがこの映画を観た時。
恐ろしいまでの緊迫感で画面に釘付けになるはずです。
5時間近い作品が長いとは思えなくなるはずです。
何故、日本では絶対に撮れないのかと言いますと、
私達日本人は言葉による表現を軽視しているからです。
だから言葉を重視した映画を撮ることは出来ません。
また、アメリカ映画は繊細な心の動きを表現することが出来ません。
ヨーロッパ人は愛を言葉で表現しようと努力しています。
言葉こそが全てと言わんばかりに。
映画の中では夫婦が語る語る語る。
一見すると裕福で知的で全てが恵まれた幸せな夫婦に見えます。
しかし、段々と段々と内面に隠された憎悪が噴き出して来ます。
どちらが悪いなどと言う単純な二元論では片付けられません。
スウェーデンでは現代日本が直面している夫婦の問題を既に1970年代に体験していた事になります。
ほとんどの社会問題は、日本ではヨーロッパから遅れること20~30年で起こると言われています。
北欧はヨーロッパの中でも高度に達成された福祉社会です。
ある意味、世界で最も進んだ社会と言えます。
それ故、2015年に生きる私達が1974年の北欧映画を観ても、
十分に現代日本と合致してしまっています。
主人公の夫は社会的地位も名誉もある教授です。
保守派を自認しクールに見える男ですが、実はリベラルどころか、
内面ではかなり進歩的な考えをしたがっています。
妻はリベラル派を自認しウーマンリブ運動にも参加していた女性です。
しかし、実態はかなり保守的な夫婦生活を夫に強要していて、
習慣と義務に追われている毎日を過ごしています。
段々と溜まってくる双方の不満はやがて内に秘められた憎悪となって蓄積し、
一気に噴出してきます。
この感覚を淡々とした夫婦の会話で魅せてくるのがこの映画の真骨頂です。
とは言え、この男女関係の描き方は、
ヨーロッパ人の夫婦と日本人夫婦ではかなり違いがあるため、
理解出来ない部分も多々あるかと思います。
昔、私がドイツ語を習っていた頃、
先生はドイツ人のバツイチの中年男性でした。
休憩時間に「離婚をしたけれど元妻とは今でも良い友達関係で一緒にテニスをしたりしています」
と聞いた時、日本人の生徒達はかなり驚いていました。
何事も「情」が絡んでくる日本人の夫婦関係ですから、
離婚ともなると二度と顔を合わせないなどと超感情的になるケースが多いと思います。
もちろん、ヨーロッパでも裁判はあるしDVもあります。
しかし、決定的に違うのは、先ほどのドイツ人男性のような考え方が出来る日本人は先ずいないかと思います。
ドイツ人でさえもかなり淡々としている風に見えましたので、
北欧の人達はさらにそうなのかな?と映画では感じた次第です。
職業的には恵まれて、何不自由ない生活をしていますが、
夫婦関係は根底のところでギクシャクしていて、
ずっと誤魔化しながら生活しています。
結果的に夫は不倫し、若い女性のもとに行ってしまいます。
妻は止めますが、夫は強引に去って行きます。
そしてまた戻って来るのですが・・・・・
妻が夫に不倫されるということ。
夫が妻に不倫されるということ。
これらが複雑に交錯してゆきます。
うんざりするほど陰鬱な男女関係が淡々と描かれてゆくのです。
そして、全6話、それぞれの話の終わりにはスウェーデンの風景を背景に、
登場人物の紹介をするのですが、
それがまた嫌になるほど陰鬱な北欧の風景なのであります。
風景を見て気が滅入るなど滅多にありませんが、
その滅多な風景が出てきます。(苦笑)
北欧人のどこか陰鬱な感覚が良~く理解できます。(大苦笑)
そして最後のストーリィ―は想像を超える展開を見せてくれました。
結果的に主人公夫婦は離婚します。
その後、新しい家庭を築いているのですが・・・・・
再び夫は若い女性と不倫しているのかと思いきや・・・・・
いやはや。
1970年代の北欧。
2015年の日本ですらまだまだ追いついていない、と感じました。
いずれにしても。
最初に挙げた3つの条件に当てはまる方々には。
大変大変お薦めの映画であります。
そうでない方には全く薦められません。(笑)
終わり
監督:イングマル・ベルイマン
この映画は1974年に公開されたもので、
実に293分もの長さになっています。
スウェーデン映画で、6話から成り立っています。
一貫して一組の夫婦のストーリーです。
大袈裟な表現をしますと。
・40歳未満視聴禁止
・男女間の問題を過去に経験しなかった者は視聴禁止
・日本のドラマやアメリカ映画が好きな人は視聴禁止
それくらいインパクトがある典型的なヨーロッパ映画であるかと思います。
そしてこの映画は中高年やもっと言うと老人が過去を振り返った時、
男と女の関係について一体何だったのか?あるいは何故未だにこれほど悩まされるのか?と、
深く考えさせられてしまう内容であると思います。
実のところ、上記に挙げた条件がクリア出来ていない人がこの映画を観ても、
何も感じないどころか退屈極まりないと思います。
全編、ほとんどこの映画には動きがありません。
多分80%くらいは、主人公夫婦の会話だけです。
俳優の表情と言葉だけで成り立っている映画と言っても過言ではありません。
これは間違いなく日本やアメリカでは絶対に撮れない映画です。
夫婦の問題の極限にまで迫って行きます。
上記の条件を全てクリアしている者だけがこの映画を観た時。
恐ろしいまでの緊迫感で画面に釘付けになるはずです。
5時間近い作品が長いとは思えなくなるはずです。
何故、日本では絶対に撮れないのかと言いますと、
私達日本人は言葉による表現を軽視しているからです。
だから言葉を重視した映画を撮ることは出来ません。
また、アメリカ映画は繊細な心の動きを表現することが出来ません。
ヨーロッパ人は愛を言葉で表現しようと努力しています。
言葉こそが全てと言わんばかりに。
映画の中では夫婦が語る語る語る。
一見すると裕福で知的で全てが恵まれた幸せな夫婦に見えます。
しかし、段々と段々と内面に隠された憎悪が噴き出して来ます。
どちらが悪いなどと言う単純な二元論では片付けられません。
スウェーデンでは現代日本が直面している夫婦の問題を既に1970年代に体験していた事になります。
ほとんどの社会問題は、日本ではヨーロッパから遅れること20~30年で起こると言われています。
北欧はヨーロッパの中でも高度に達成された福祉社会です。
ある意味、世界で最も進んだ社会と言えます。
それ故、2015年に生きる私達が1974年の北欧映画を観ても、
十分に現代日本と合致してしまっています。
主人公の夫は社会的地位も名誉もある教授です。
保守派を自認しクールに見える男ですが、実はリベラルどころか、
内面ではかなり進歩的な考えをしたがっています。
妻はリベラル派を自認しウーマンリブ運動にも参加していた女性です。
しかし、実態はかなり保守的な夫婦生活を夫に強要していて、
習慣と義務に追われている毎日を過ごしています。
段々と溜まってくる双方の不満はやがて内に秘められた憎悪となって蓄積し、
一気に噴出してきます。
この感覚を淡々とした夫婦の会話で魅せてくるのがこの映画の真骨頂です。
とは言え、この男女関係の描き方は、
ヨーロッパ人の夫婦と日本人夫婦ではかなり違いがあるため、
理解出来ない部分も多々あるかと思います。
昔、私がドイツ語を習っていた頃、
先生はドイツ人のバツイチの中年男性でした。
休憩時間に「離婚をしたけれど元妻とは今でも良い友達関係で一緒にテニスをしたりしています」
と聞いた時、日本人の生徒達はかなり驚いていました。
何事も「情」が絡んでくる日本人の夫婦関係ですから、
離婚ともなると二度と顔を合わせないなどと超感情的になるケースが多いと思います。
もちろん、ヨーロッパでも裁判はあるしDVもあります。
しかし、決定的に違うのは、先ほどのドイツ人男性のような考え方が出来る日本人は先ずいないかと思います。
ドイツ人でさえもかなり淡々としている風に見えましたので、
北欧の人達はさらにそうなのかな?と映画では感じた次第です。
職業的には恵まれて、何不自由ない生活をしていますが、
夫婦関係は根底のところでギクシャクしていて、
ずっと誤魔化しながら生活しています。
結果的に夫は不倫し、若い女性のもとに行ってしまいます。
妻は止めますが、夫は強引に去って行きます。
そしてまた戻って来るのですが・・・・・
妻が夫に不倫されるということ。
夫が妻に不倫されるということ。
これらが複雑に交錯してゆきます。
うんざりするほど陰鬱な男女関係が淡々と描かれてゆくのです。
そして、全6話、それぞれの話の終わりにはスウェーデンの風景を背景に、
登場人物の紹介をするのですが、
それがまた嫌になるほど陰鬱な北欧の風景なのであります。
風景を見て気が滅入るなど滅多にありませんが、
その滅多な風景が出てきます。(苦笑)
北欧人のどこか陰鬱な感覚が良~く理解できます。(大苦笑)
そして最後のストーリィ―は想像を超える展開を見せてくれました。
結果的に主人公夫婦は離婚します。
その後、新しい家庭を築いているのですが・・・・・
再び夫は若い女性と不倫しているのかと思いきや・・・・・
いやはや。
1970年代の北欧。
2015年の日本ですらまだまだ追いついていない、と感じました。
いずれにしても。
最初に挙げた3つの条件に当てはまる方々には。
大変大変お薦めの映画であります。
そうでない方には全く薦められません。(笑)
終わり