天体望遠鏡を使用した撮影をしたい人のために

デジタル一眼レフカメラやコンパクトデジタルカメラを持っている人で、
天体望遠鏡と接続して月や土星木星、もっと言うと星雲、銀河、星団などの写真を撮りたいと思っている方は結構いるかと思います。

実際にSNSの投稿を見ていると月の写真をアップしている人が非常に多いと感じています。

反面、上手に撮影された月の写真はほとんどありません。

と言うよりも、例えデジタル一眼レフカメラの望遠レンズと言えども、
月をクリアに写すのは至難の業です。
(高級レンズになれば写るのが凄いところですが)

これがさらに別の天体になると、通常のカメラで撮影されたものは、
アップされている写真すら見当たりません。

何故かと言うと、通常のカメラでは先ず撮れないからです。

そこで凝った人なら天体望遠鏡を買ってカメラと接続して撮影しようと思うのも当然の流れではあるかと思います。

ところがなのです。

天体望遠鏡と言うヤツ。

かなり厄介な存在です。

天体望遠鏡を買って星の撮影をしたいんですけど、
 どんな機種が良いですか?」

と尋ねられた場合。

私はウ~ンと唸って返答に困ってしまいます。

その人の性別、性格、職業、生活体制、居住地区、自動車の有無、
天文に対する熱意、天文知識等々を思いながら、
どのように答えるのが良いのか迷うからです。

簡単に言うと、天体望遠鏡とは、
「凄く重い」「面倒臭い」「操作が難しい」「時間がかかる」
「空が暗い場所まで行く必要がある」「天文の知識が必要」
「天体観測、天体撮影以外には使用できない」
等々、クリアすべき課題が多過ぎるのです。

お金があるからと言って衝動買いをした場合、
間違いなく押入れ行きが確定することでしょう。(苦笑)

一眼レフカメラや双眼鏡などは天体以外の用途にも流用出来るため、
人に簡単に勧めることはできます。

しかし天体望遠鏡は他に潰しがききません。

ともかくそれほど厄介なのですが・・・・・

それらを乗り越えた時、実に楽しい天文趣味世界が展開して来ます。

先ず最初に月、土星木星、金星、火星くらいなら以下の装備で何とか撮れます。
イメージ 1
小型の赤道儀屈折望遠鏡です。

最大のポイントは「赤道儀の正しい操作」にあります。

赤道儀とは、星を自動追尾するための装置です。
(撮影用の赤道儀にはモーターが付いていて電動で動くようになっている)

赤道儀がなければ天体の撮影は出来ません。
(星景写真と呼ばれる星と風景の写真は撮れますが天体は無理です)

赤道儀を使用しない新しい撮影機材(コンピュータ制御の経緯台式)もありますが、
天文誌に載るような写真は未だに赤道儀が使用されていますので、
当記事では赤道儀をメインに話を進めます。

赤道儀には「極軸望遠鏡」と言うのが付属しています。

この望遠鏡で北極星を捉えて正しい位置に導入しなくてはなりません。

月くらいでしたら極軸望遠鏡がおおよそ北を向いていて、
正しい高さにセットされていたら写ってはくれます。

しかし木星とか土星になりますと、
キチンと正しく導入していないと写真は全部ブレてしまいます。

この操作、単純に北極星を望遠鏡の視野内に入れるだけではダメなのです。

現在の年代と日付と時間を考慮して記された、
天の北極とは微妙にズレた正確な位置に北極星を導入し、
正確な天の北極に赤道儀をセッティングしなくてはならないのです。

それほど精密なセッティングが必要になってきます。

ちなみに星雲、銀河、星団などの綺麗な撮影をしようとした場合、
上記の装備では全く歯が立ちません。

以下の装備が必要です。
イメージ 2
自動追尾式の赤道儀以外に、さらに「ガイド鏡」と呼ばれる望遠鏡が別に必要です。

これはキチンと星が自動追尾されているか確認・修正するための望遠鏡です。

現在ではオートガイダーと呼ばれる装置をつけて自動で確認・修正をさせるのが一般的です。

これらの機材を正しく使用して、現在のデジタル一眼レフカメラでも、
最低でも5~20分くらいの露出をして撮影します。

さらに撮影した写真を天文ソフト上で現像し、
重ね合わせてやっと綺麗な星雲、銀河、星団の写真が仕上がります。

この世界になると難易度はトリプルA級の恐ろしさです。

単純にカメラ操作が上手なだけでは全く歯が立ちません。

それ故、私は最も技術的に難しいのは天体撮影では?と思っております。

くれぐれも天体望遠鏡を使用した撮影をする場合は、
上記の事を詳細に勘案して購入して下さい。

まとめ

・天体撮影できる望遠鏡は非常に重い

・移動には自動車が絶対に必要
(オートバイでも無理。望遠鏡が壊れてしまうおそれあり)

・女性の場合、下手をすると自動車への荷物の積み込み作業すら難しい
(それほど重い)

・操作がかなり難解

・天文の知識が不可欠

終わり



余談:

釣りと同様に趣味が天体観測です、と言うと、
大抵の人、特に女性は「素敵ですね。何とロマンチックな趣味を」と、
うっとりします。(笑)

現実は全く違います。

特に天体撮影の現場はかなりカッカしながら撮影しています。(苦笑)

「何故、ピントが合わない。ボケーーーーー」とか(爆)、
「あのバカ雲、さっさとドケーーーーー」などと心の中では絶叫してます。

そんな時。

妙齢の素敵なご婦人が来たとします。

「まあ、天体観測ですか♪♪
 ちょっと見せてもらえませんか???」と。

心の中では人が話しかけて来た時点で、
「オレは撮影してんだよ!!見れないの!!邪魔すんな!!」と怒りまくってますが、
相手が素敵なご婦人の場合は・・・・・

カメラを即座に外して「まあ、こんな感じですけど」と、
カッコをつけるのは言うまでもない。(爆)



余談2:

星雲、銀河、星団の写真を撮るためには、
空の暗い山に行く必要があります。

当然、当日は晴れていなくてはいけません。

さらに月明かりもあってはダメなのです。

従って、この種の撮影が出来る日は非常に限られています。

普通の勤め人がこういう撮影を出来る日はほとんど無いと考えるべきです。

私の場合、色々な生活体制の問題があり、
こと星雲、銀河、星団の撮影に関しては、
ほとんど出来ないまま今に至っている現状があります。

それほど厄介なのが天体撮影の世界だと思います。

もちろん住んでいるのが横浜市内と言う圧倒的なハンディキャップも無視できません。

大都市に住んでいる人はそれだけで天体撮影には大きなハンディがあります。