静寂の美

静寂の美
 
「畠山即翁の大師会茶会-井戸茶碗信長の取り合せ-」畠山記念館(東京・白金台)
 
2015年4月25日(土)

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もうここ何年も娘と一緒に季節ごとに必ず訪れている場所が白金台の畠山記念館です。
 
超都心とは思えない閑静な住宅地に建っています。

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茶道系の美術館で、日本庭園内には茶室が複数配置されていて、
時折公開され、一般客も楽しめるようになっています。
 
また、美術館内にも茶室があって500円で干菓子と薄茶を頂けます。
(4月からちょっと値上がったようです)
 
これは素晴らしい趣向です。
 
国宝や重要文化財を間近に鑑賞しながらお茶も楽しめる仕掛けなのです。
 
こんな贅沢な空間は、この7年以上、様々な美術館を娘と一緒に巡って来ましたが、
他に知りません。
 
美術館内に茶室がある美術館はありますが、あくまでも鑑賞用です。
 
根津美術館(東京・南青山)、出光美術館(東京・丸の内)、三井記念美術館(東京・日本橋)の館内にありますが全て鑑賞用で、
美術館内の茶室でのお茶のサービスはありません。
 
出光美術館泉屋博古館では無料の自動給茶機のサービスはありますが、茶室ではありません。

戸栗美術館では有料でコーヒーのサービスがあります。この3つの美術館も館内でお茶が飲めると言う点で結構珍しいです。

根津美術館五島美術館には日本庭園に茶室があります。しかし一般客用ではありません。根津美術館の庭園にはカフェもありますが、和ではなく洋です。
 
さて、畠山記念館の美術館内には小さな茶室と茶庭があり、
さすがに近くに美術品があるため、茶室内で炉は使用しませんが、
奥の部屋でお茶を点てて持って来てもらえます。
 
そもそも美術館なので非常に静かです。
 
薄暗い茶室の床の間には季節の花の一輪挿しが飾ってあります。
 
今回は小手毬でした。
 
野原に普通に咲いている花・・・・・
 
何と素敵な趣向なのでしょうか。
 
茶庭にはちゃんと蹲踞があり、小さいながらも何とも言えない素敵な雰囲気を醸し出しています。
 
この質素さと静けさ。
 
一輪挿しの野の花を眺めて外の花鳥風月に想いを馳せる・・・・・
 
この感覚は日本の美の頂点を極めている、と感じます。
 
それは静寂の美であるとも思っております。
 
実のところ、この日は最初に渋谷の街をちょっとウロウロして、
喧騒の中にいました。
 
その後、三菱一号館美術館でワシントン・ナショナル・ギャラリー展を鑑賞し、
さらに国立公文書館JFK展を観て来ました。
 
つまり欧米三昧をして来たのです。
 
欧米の文化は面白いと思いますが、アジアを含め、
日本以外の全ての贅沢な物は豪華絢爛だと感じています。
 
世界中の贅沢な物はほとんど同じ感覚ですが、
日本だけが違っていると最近つくづく感じています。
 
私達日本人は、心の奥底のどこかで豪華絢爛を軽蔑していないでしょうか?
 
私は欧米文化に慣れている者です。
 
聴く音楽はバッハであり、鑑賞する絵画は17世紀オランダや印象派シュールレアリスムであり、
食べる物は欧米の物を好み、ミシュランガイドの星を有難がっています。
 
能や歌舞伎も好きですが、どこか異国の文化のように感じています。
 
茶道の世界には無知です。
 
けれども、狭く薄暗い茶室の中で小さな干菓子と薄茶を振る舞われた時。
 
茶碗を差し出される時の所作を目の当たりにした時。
 
この動きは美しい、と素直に感じるのです。
 

そしてこのお菓子もお茶も非常に美味しい、と素直に感じるのです。

今、自分のいるこの空間は全てが調和し、自然体であり、
それでいて圧倒的な美の中にいるのだ、と感じるのです。
 
私達の祖先は、おそらくは千利休が大成させた侘び茶の世界は、
日本人の心の奥底に深く深く隠されていると思うのです。
 
普段は決して表に現れません。
 
西洋の派手な虚飾の世界に埋もれているのが普通だからです。
 
しかしながら。
 
たとえ茶道の素養の無い者であっても、
茶室に入った途端、日本人であるのなら。
 
一発でこの世界を理解するはずです。
 
畳と足袋が擦る時の僅かな音。
 
蹲踞の僅かな水音。
 
耳を研ぎ澄ませ、奥の炉の僅かな音を聴こうとしてみたり。
 
そして一輪の小手毬に目をやり、心の中で思う季節感。
 
静寂の美。
 
この世界は優しい調和の上に成り立っている、と感じるのです。
 
終わり
 
 
 
余談:今回のお菓子は諸江屋(金沢)の干菓子、若葉と観世水でした。
 
茶碗も見逃せません。
 
う~ん、と唸るような茶碗で出て来ます。
 
私と娘は必ずお茶もここで楽しむのが慣わしになっています。

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