絵画鑑賞と亡き友の思い出
まだ10代後半の頃だったと思う。
友人の1人がヨーロッパのハイソな女性と付き合い出した。
これは当時、東京のオシャレ度ナンバー1の麻布・六本木界隈でも極めて異例で、
私達周囲の者も大変な影響を受けた。
ヨーロッパのハイソな人達は間違いなく文化交流を仕掛けて来る。
私は彼女から影響を非常に受けた。
元々芸術志向は異常に高いが、それに拍車がかかった。
クラシック音楽だけでなく、絵画鑑賞にも行き始めた。
他の友人達も影響を受け、各自が個性に合わせて色々な芸術を楽しみ始めて行った。
私達の生活スタイルは大きく変わったと思う。
日常生活の中で自然に芸術を楽しむスタイルへと。
それから数年後。
そんな友人の1人がにこやかに語り掛けて来た。
「僕はね。デルヴォーの作品が好きなんだ。ポール・デルヴォー。
この画集を観てくれ。幻想的な上にここに描かれている女性達は生きていないように見える。不思議な絵だと思う。」
ポール・デルヴォー。
何とも言えない空虚なエロティシズムを感じさせる画家。
面白いね、と私は言った。
しかしそれからしばらくして彼は事故で亡くなってしまった。
あれから30年近い月日が経っている。
今でも私はデルヴォーの作品の前に立つと彼のにこやかな語り口を思い出すと共に。
死の暗示を感じる。
http://youtu.be/mwvDon1_iKs
http://youtu.be/NLrNhMGPQtk