映画:カストラート

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映画:カストラート

1994年 イタリア、ベルギー、フランス合作

監督 ジェラール・コルビオ

出演 ステファノ・ディオニジ

美を追い求める者は醜悪であると思っています。

しかし、稀にその醜悪なる者は後世に語り継がれる美を創出するとも思っています。

この映画はバロック時代に実在した歌手ファリネッリを主人公にしています。

史実に忠実に描かれているようです。

どうか泣かせてくれ

この醜い運命を

求めさせてくれ、自由を

非常に有名なヘンデルのオペラ「リナルド」よりアリア≪私を泣かせてください≫。

ソプラノ。

人間が歌える最高音域。

しかし、バロック時代において、
女性が歌うには制約が多く、
ソプラノは少年達が歌う機会が多かったのです。

今、この現代においても少年合唱団としてその名残はあります。

けれども少年は少年。

つまり子供なのです。

豊かな声量で堂々たるオペラ作品や教会音楽のソプラノを歌い上げるには力量不足でした。

そこで考え出されたのがカストラートです。

カストラートとは・・・・・

声変りする前の少年の睾丸を摘出して、
ソプラノを大人になってからも維持させるために考え出されたものなのです。

映画の冒頭、非常にショッキングな場面があります。

睾丸を摘出された少年が教会で歌う少年達の前で全裸で飛び降り自殺するシーンです。

この映画の主人公は幼い時に父を亡くし、貧困の中で暮らしていました。

当時、いや、現代においても、手っ取り早く富と名声を得る手段は芸術家になることです。

彼らは音楽家になるべく過ごしていました。

兄は作曲家に。

弟は・・・・・

父の死後、兄の手によりカストラートにされてしまいました。

その天性の歌声で兄弟は富と名声を手に入れます。

しかし兄には才能はありません。

ヘンデルが弟の天才性に気づき接近しますが、
兄弟はその傲慢な態度に決して共演はしませんでした。

でも弟は天才であるが故にヘンデルの才能を理解します。

ヘンデルこそが後世に語り継がれる不世出の作曲家であることを。

そして紆余曲折はありながらもヘンデルの「リナルド」が上演されます。

あまりの美しさに息をのむ聴衆達。

胸をかきむしるヘンデル

人間の欲は醜く、絶望的であるとも思えます。

しかしながら。

およそ音楽ほど人に感動を与えるものはない。

そんなことを感じさせられた映画であります。

そしてソプラノの神的な美しさに震えてみたい人には大変お勧めの映画であります。

終わり



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