第25回記念モスリンコンサート「バロック室内楽の愉しみ」

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第25回記念モスリンコンサート

バロック室内楽の愉しみ」

2014年5月4日(日)午後2:00開演

場所:旧上毛モスリン事務所(群馬県指定重要文化財

演奏:Concert Azalee コンセール・アザレ

曲目:

テレマン(Georg Philipp Telemann, 1681~1767)

フルート、ヴィオラ・ダ・ガンバファゴット通奏低音のための四重奏曲 ハ長調

Grave - Allegro - Largo - Vivace



バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685~1750)

イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971

Allegro - Andante - Presto



テレマン(Georg Philipp Telemann, 1681~1767)

2本のフルート、ヴィオラ・ダ・ガンバ通奏低音のための四重奏曲 イ短調

Andante - Vivace - Presto - Allegro



休憩



コレット(Michel Corrette, 1704~1795)

コミック協奏曲第4番 イ長調より第1楽章

Allegro



ドルネル(Antoine Dornel, 1680~1756)

四重奏によるソナタ ロ短調



ボアモルティエ(Joseph Bodin de Boismortier, 1689~1755)

2本のフルートのための組曲 ト長調 Op.11.2

Prelude(Gravement) - Rondeau(Gaiment) - Passacaille



マレ(Marin Marais, 1656~1728)

ヴィオール曲集第1巻よりシャコンヌ ニ長調

Chaconne



シェドヴィーユ(Nicolas Chedeville, 1705~1782)

協奏曲「春」 ハ長調

Allegro - Adagio - Allegro



さて、2014年5月4日(日)。

娘が試験官のアルバイトが朝から夜まで入ったため、
ブログ友達のチェンバロ演奏家クラヴサンさんのコンサートに行けることになった。

コンサートに頻繁に行けるような生活体制ではないため、
貴重なチャンスを逃す訳には行かない。(笑)

どうせなら撮影旅行も兼ねたいと思い、朝早くから横浜市の自宅を出て、
長距離電車を乗り継ぎ、群馬県の館林へと向かった。

撮影した写真については後日と言うことで。

モスリンコンサートは、私は今回で2回目となる。

場所は館林の旧上毛モスリン事務所(写真参照)と言う西洋館で行なわれる。

県の重要文化財の中で行なわれるコンサートなのである。

初めて聴いた時はブッ飛んでしまった。

数年前の初めての時は早く着いたので、
西洋館に隣接している公園のベンチで休んでいたら、
窓からバロック・フルートなどの音が聴こえてきて何とも素敵な気分になった。

音響も独特で抜群に良い味を出していると私的には思っている。

バロック音楽とは西洋館で演奏されるべきである、と。

ブログを始めてから演奏家の方達と知り合えて、
それまでの独りよがりな聴き方から一転し、
より広く、より深くバロック音楽が楽しめるようになっていると感じている。

その最初に行ったコンサートがモスリンだったのである。

初めて古楽器の演奏を耳にした時、
大きな違和感から始まったのを良く覚えている。

「あれれ???何かが違う。」と。

いつもCDで聴いているバロック音楽とはちょっと違うのである。

後からクラヴサンさんに聞いたら、
それは基本となるチューニングが現在とバロック時代では違っていることを教えてもらった。

絶対音感の無い私にはそれが「違和感」として聴こえたようだ。

もちろん、クラヴサンさんのコンサートはバロック時代の音に合わせている。

現代の世界都市東京においても純粋な古楽器による演奏を聴ける機会は多くない。

演奏される曲も先ず聞いた事もない作曲家ばかりだと思う。

このコンサートの特徴は「解説をしてくれる」と言う点にある。

余程のマニアでない限り、今回の曲目でも、
コレット」「ドルネル」「ボアモルティエ」「シェドヴィーユ」?????

知っている人の方が遥かに遥かに少ないはずだ。

演奏する楽器も普通私達が目にするクラシック音楽のソレとは似ているようで違っている。

フルートもピアノも弦楽器も、音も形も微妙に違う。

それをキチンと解説してくれるので、聴者にとっては大変有難い。

では演奏された曲を、説明して頂いた事も含めて解説して行きたい。

テレマン(Georg Philipp Telemann, 1681~1767)

フルート、ヴィオラ・ダ・ガンバファゴット通奏低音のための四重奏曲 ハ長調

Grave - Allegro - Largo - Vivace

出だしはテレマンだった。

現代はバッハが一番有名だが、実は当時、テレマンの方が遥かに有名だったそうだ。

ドイツ人の音楽家だが、ドイツはヨーロッパの田舎だ。

これは今でもその感覚が残っている。

巨大な経済を手に入れたドイツだが、
武骨で融通が利かないつまらないヤツらの集合体、
と言うのが当時の先進国のフランス人やイタリア人の見方だと言って良いかと。

まあ、当時は「ドイツ」と言う国は無かったが、
おおよそゲルマン人とはそんな感じで見られていたと言って良い。

そんな中、テレマンだけはとても有名だったらしい。

この曲の展開は緩急緩急となる典型的なバロック音楽の形式だ。

ファゴットが入っていると言う点において珍しい。

また、これは協奏曲をとても意識した内容となっているそうだ。

当時、協奏曲が流行り始めていた。

Vivaceではファゴットが長音を出し、フルートが速い展開を見せたり、
逆にフルートが長音を出している間、ファゴットが速い展開を見せたりと、
面白い内容だったと思う。

なるほどカンデツ的???協奏曲的???

長調で始まっているのもオープニングとしては良い選択であったと思う。

さて・・・・・

続いて。

バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685~1750)

イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV 971

Allegro - Andante - Presto

これが今回、私的には一番興味深い曲だった。

クラヴサンさんがブログにおいて、この極めてメジャーなバッハの曲を仕上げるにあたって、
相当悩んでおられたのを知っていたからだ。

一般的にイタリア協奏曲の演奏を聴くとともかく速い。

圧倒的に速い。

それを私は当然のものとして聴いていた。

しかし、クラヴサンさんは、全く違うタイプ?に仕上げようとしているらしかった。

ブログ記事を追い掛けながら、
このコンサートに行ければ良いなと思っていた次第なのである。

会場では演奏場所に向かって左側奥に座ってみた。

クラヴサンさんの運指が見える位置だからだ。

Allegroが始まった途端、あ~なるほど、と思った。

テンポが遅いと言えば遅いが、遅いな~と言うほど遅くはない。

極めて微妙なラインをキチンと保っているスピードだった。

そして、丁寧に丁寧に丁寧に1音1音をしっかりと弾いていた。

「バッハの典型的な音型」と言う言い方をブログではされていたクラヴサンさん。

その意味が何となく理解出来たような気がした。

グググーーーーーーーッと音が浮かび上がってくるような感じとでも言ったら良いのだろうか???

速く弾いてしまうと分からない和音や旋律がとても楽しめる。

それが見えて来る演奏と言えるかと。

そして、この曲の始まりの前に解説してもらったのだが、
バッハはこの曲を演奏する場合「2段チェンバロを使用せよ」と指定しているらしい。

チェンバロには通常見かけるピアノと同じ1段タイプと、
強弱をよりはっきりつけられる2段タイプがある。

イタリア協奏曲・・・1台の楽器で演奏されるのに何故「協奏曲」なのか???

2段の上の段で弾くと弱い音に。

下の段で弾くと強い音に。

両手、片手が上と下を行ったり来たりしながら複雑に演奏は進行して行く。

まるで協奏曲のように。

だから「イタリア協奏曲」なのだ、と。

演奏会が終わった後、少しクラヴサンさんとお話しさせて頂いたのだが、
第2楽章こそ、その「典型的なバッハの音型」があった、と。

う~ん、なるほど・・・私的には速い第1、3楽章で何とか聴き取ろうとしていたが、
Andanteだったか・・・・・(苦笑)

いずれにしても。

素晴らしい演奏だったと思う。

そして続いて再びテレマンに。

テレマン(Georg Philipp Telemann, 1681~1767)

2本のフルート、ヴィオラ・ダ・ガンバ通奏低音のための四重奏曲 イ短調

Andante - Vivace - Presto - Allegro

これは緩急急急とちょっと微妙に違う形式だが短調

私的には短調を好んでいるのでとても楽しめた。

ここで休憩となる。

チェンバロは非常に繊細な楽器なので長時間の連続演奏は不可能となる。

必ず調律のための時間が必要になる。

ふと思ったのだが、先日行ったブロ友のソナタさんの演奏会の時は1段チェンバロだったので、
調律にそれほど時間がかからなかったが、
2段チェンバロ・・・凄く時間がかかって大変そうだった。

今更ながら「2倍だ!!あ~そうだったのか!!」と思った。(笑)

さて、後半のプログラム。

これは相当クセモノだと思う。(笑)

先ず、全員フランスの作曲家だ。

多分、後半の作曲家を誰1人として知らない人の方が多いと思う。

マレは一応有名ではあるが・・・・・

他は果たしてどうだろうか???

では解説して行こう。

コレット(Michel Corrette, 1704~1795)

コミック協奏曲第4番 イ長調より第1楽章

Allegro

はい、後半第1曲目。

人名はともかく「コミックって何???」と思うだろう・・・・・

当時、マンガがあったのか?と。(^^;

私も何だろう?と思っていたらキチンと解説してくれた。

痒い所を掻いてもらった感覚だった。(笑)

当時、流行していたのはオペラなのだが、オペラはそもそも堅苦しい

そこで、オペラを軽くしたような内容の「オペラ・コミック」と言うのも流行っていたそうなのだ。

そこで演奏されていたのがコミック協奏曲と言うものだった、と。

う~ん、なるほど、と思った。

曲調も明るく楽しめた。

ドルネル(Antoine Dornel, 1680~1756)

四重奏によるソナタ ロ短調

この曲は個人的にはバッハ的に聴こえた。

短調だし、凄く好みだった。

何曲目だったかな・・・・・

リコーダーに続いて1本目のフルートが主題を演奏し、
続いて2本目のフルートが、そしてヴィオラ・ダ・ガンバチェンバロと続いて行く曲調があった。

初めて聴いた曲なのでフーガを構成しているのかどうかまでは聴き取れなかったが、
とても面白いな~と感じた。

ボアモルティエ(Joseph Bodin de Boismortier, 1689~1755)

2本のフルートのための組曲 ト長調 Op.11.2

Prelude(Gravement) - Rondeau(Gaiment) - Passacaille

バロック・フルート2本による演奏。

フルートの音色って、特にバロック・フルートの音色って・・・・・

何とも言えない良い雰囲気を醸し出すかと。

西洋館の窓には木々の葉の新緑が見えていた。

とても澄んだ印象のある曲だった。

そして・・・・・

マレ(Marin Marais, 1656~1728)

ヴィオール曲集第1巻よりシャコンヌ ニ長調

Chaconne

マラン・マレの曲が・・・・・

あ~・・・私は今日、この1曲のために横浜から100km以上離れた館林まで来たのだ、
と思わせてしまう曲であったかと思う。

映画「めぐり逢う朝」を以前、ソナタさんから紹介され観てブッ飛んだ体験がある。

マレの話なのだが。

ヴィオラ・ダ・ガンバと言う楽器。

これはイタリア語だが、フランス語だとヴィオールと呼ばれる。

現代のオーケストラでは見られない楽器だ。

だが、バロック音楽の演奏では頻繁に登場する。

そして実に素晴らしい音を出す。

ずぅ~~~~~~~ん、と言う重低音は何とも言えない。

そして時折非常に激しい動きを見せ、左手の運指は神業のような動きをする。

マレのこの1曲はヴィオラ・ダ・ガンバの魅力を最大限に活かして来ていると感じる。

泣きそうになるくらい素敵な1曲かと。

そしてコンサートの最終曲へと。

シェドヴィーユ(Nicolas Chedeville, 1705~1782)

協奏曲「春」 ハ長調

Allegro - Adagio - Allegro

これ、面白い。

ヴィヴァルディの「春」ほぼそのまんま。(笑)

当時は著作権などないし、情報伝達手段も今とはまるで違う。

もちろん録音技術なども存在していなかった。

だから簡単にパクってしまう。(爆)

余談だが、実はバッハもかなりヴィヴァルディの曲を編曲している。

そんな曲だったが、面白いのは、当時、この曲も凄く人気が出たそうなのである。

微妙にヴィヴァルディの「春」とは間奏などが違っていて興味深かった。

かなり良いと思った。

そして、25回記念の言葉をクラヴサンさんが述べて、その後アンコール。

アンコールは先ほどのコミック協奏曲の第3楽章だった。

場所と言い、曲と言い、とても素敵なコンサートだったと思う。

GWで大渋滞していた自動車の列を見ながら館林駅まで歩いて帰って行った。

充実した1日となった。

終わり