「マウリッツハイス美術館展」東京都美術館(上野)

2012年6月30日(土)

いよいよ超弩級の美術展がやって来た。


オランダのハーグにある小さな美術館。

だが、収蔵されている作品のレベルは異常に高い。

17世紀オランダ絵画の宝庫でヨーロッパでも最高レベルの美術館かと。

これから2014年まで改修工事に入るため、今回、東京と神戸で素晴らしい美術展が鑑賞できることとなった次第だ。

17世紀・・・・・

実は個人的にたまに思う事がある。

「人類の美に対する精神性は17世紀ヨーロッパを頂点にして、衰退しているのではないか?」と。

私は現代の音楽も大好きだが、一番好きなのはバッハの対位法音楽だ。

やはり17世紀に頂点を迎えた音楽的技法だ。

絵画の世界も。

フェルメールレンブラント、そしてルーベンスらによって、この17世紀に頂点を迎えていると思う。

「いわゆる絵画」を想像した場合。

現代の絵画がこのオランダ・フランドル絵画を超えているとは思えない。

むしろ、我々現代人は衰退している、と。

19世紀に入り、印象派の登場により、かなり盛り返したとは思うが・・・・・

いずれにせよ。

今回の展示会は、果たして現代に生きる我々は本当に精神的に豊かなのか?と思い知らせてくれる強烈なものであると思う。

ちなみに数年前に六本木の国立新美術館で鑑賞した「オルセー美術館展」以来の大感動だった。

さて、さて。



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↑改修工事が終わった東京都美術館(上野)が最初に仕掛けた美術展。

マウリッツハイス美術館展」

 フェルメールの最高傑作がやって来る。

 取り急ぎ、先ずは初日を制した。

 しかし。9:30からの開場なのだが、私は9:00に到着。

 余りの混雑に、既に開場していたが、超長蛇の列が・・・・・



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↑新しくなった東京都美術館



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フェルメール展が開催されている館をアップで。



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↑人人人で埋め尽くされていた朝の東京都美術館
 (^。^;



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↑「真珠の耳飾りの少女青いターバンの少女)」
  1665年頃 油彩・カンヴァス 44.5 × 39cm
  ヨハネス・フェルメール1632-1675

美しい・・・・・

ともかく圧倒的に美しい。

この小さな絵画の実物は光を放ってくる。

今回の展示会において、偶然とは言え、劇的な演出がなされている。

新装された東京都美術館

今までとはちょっと勝手が違っている。

この作品だけを観るために走って行き、後から戻って別の作品を鑑賞する小技は使えない。

一方通行のエスカレーターに乗って行かなくてはいけないため、
最初の作品をパスする事は許されない仕掛けだ。

しかも、今回はしょっぱなからルーベンスレンブラント、もう1つのフェルメールと、
絶対に見逃せない作品がかまされている。

それらを鑑賞した後、次の階に上がるとこの作品がある。

凄い混雑で行列に並ぶ。

だが、20mくらい離れた位置からでも時折、
行列の隙間からこの作品が顔をのぞかせる。

恐いまでの存在感。

モナ・リザにも匹敵すると言われるこの作品。

個人的な感想では・・・・・

今から25年ほど前、ルーヴル美術館モナ・リザの本物を鑑賞したが、
「小さい」としか思えなかった。(苦笑)

面白い絵だとは思ったが、美しいとは思わなかった。

このスタンスは基本的に今でも同じだ。

だが、このフェルメールの最高傑作は。

純粋に、強烈に、美しいと思った。

ラピスラズリのブルーですら添え物に過ぎない。

一体全体、約350年も昔の少女の絵に、
現代人は今も何故圧倒的な美を感じるのだろうか???

行列に並び、時折姿を現すこの絵にドキドキする。

段々と近づいて来て、至近距離で鑑賞する。

それは劇的な効果をもたらす。

混雑する街角で、かつて好きだった女性を見つけた感覚か???

否、違う。

この絵は、ストレートに美しい。

若い女性の魅力がストレートに完璧に表現されている。

この一瞬のきらめき。

人類の絵画史上、最高傑作の1つだと言うのは頷ける。



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↑「ディアナとニンフたち」1653-1654年頃。
 油彩・カンヴァス。97.8×104.6cm。
 ヨハネス・フェルメール

今回の展示会では、もう1つのフェルメール作品が来ている。

近くの国立西洋美術館でも現在、フェルメールが一点来ている。

従って今現在、3つのフェルメールが日本で鑑賞できる事になる。

これは大変なチャンスだと思う。



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↑「スザンナ」1636年
 油彩・板(右側を拡張)。47.4×38.6cm。
 レンブラント・ファン・レイン 1606-1669年

レンブラントの作品も今回かなり来ている。

そして、レベルが非常に高い。



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↑「自画像」1669年
 油彩・カンヴァス。65.4×60.2cm。
 レンブラント・ファン・レイン

この作品は晩年のもの。
いわゆるレンブラント・ライトみたいな浮かび上がって来るものではないが、
妙に面白い雰囲気を醸し出している。

いぶし銀みたいな感じ。(^^v



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↑「シメオンの賛歌」1631年
 油彩・板。60.9×47.9cm。
 レンブラント・ファン・レイン

これ、凄い。

実物の人物はとても小さいんだけど、
レンブラント・ライト効果なのだろうか・・・・・

この画像からでは迫力はまるで伝わって来ないが、
本物の光り輝いて来る感覚は圧巻だ。
(^^v



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↑「聖母被昇天(下絵)」1622-1625年頃
  油彩・板 87.8×59.1cm。
  ペーテル・パウルルーベンス 1577-1640年

これはアニメ「フランダースの犬」でネロ少年が見詰めるアントワープ聖母大聖堂の絵の「下絵」だ。

下絵とは言ってもバカに出来ない。

今でいうプレゼン用の本気の絵だからだ。

ルーベンスはこの絵を使って大聖堂の注文を勝ち得たのだから。



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↑「ミハエル・オフォヴィウスの肖像」1615-1617年頃
 油彩・カンヴァス。111.5×82.5cm。
ペーテル・パウルルーベンス

これ、凄くいい。

ルーベンスってスゲ~なと、さり気なく思わせる作品かと。

個人的に今回の展示会で凄く押せる作品です。
(^^v



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↑「ごしきひわ」1654年
 油彩・板。33.5×22.8cm。
 カレル・ファブリティウス 1622-1654年

なんか面白い鳥の絵だった。(笑)



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↑「漂白場のあるハールレムの風景」1670-1675年頃
 油彩・カンヴァス。55.5×62cm
 ヤーコブ・ファン・ライスダール 1628?-1682年

今回はこの種の風景画も素晴らしいのが沢山ある。

ヤバいほどにレベルの高い展示会かと。



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↑「ヴァニタスの静物」1630年
 油彩・板。39.5×56cm
 ピーテル・クラースゾーン 1596/97-1660年

17世紀のオランダもしくはフランドル絵画と言うのは・・・・・・

ともかく素晴らしいと思う。

こう言った静物画も目を見張る作品が多い。



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↑「燃えるろうそくのある静物」1627年
 油彩・板。26.1×37.3cm。
 ピーテル・クラースゾーン

この絵、好き。(^^v

この時代の静物画の精密さと言ったら・・・・・

今、千葉市のホキ美術館で現代の画家がこの世界に再挑戦している。

素晴らしいと思う。

だが、今から350年以上も昔のこれらの作品群。

現代人が勝っているとは言えない。

さて、最後に。

この美術展は東京での展示が終った後、神戸市立博物館で開催される。

神戸での展示は2012年9月29日~2013年1月6日まで。

東京での展示(東京都美術館)は2012年6月30日~9月17日まで。

幸い、東日本と西日本の両方で開催される。

このチャンスは絶対に見逃してはいけないと思う。

終わり