涙が止まらなくなる時

開高健氏の古い紀行文だったと記憶している。

荒野を旅していた時、
ドライバーの外国人が音楽をかけた。

アルビノーニアダージョ

カーステから流れた途端、
涙が止まらなくなった、と。

人は何かのタイミングで特定の音楽を聴いた時、
涙が止まらなくなる事があるかと思う。

その音楽は人により違いがあると思う。

私にとってはBachの音楽がソレかも知れない。

例えばBWV22より
「汝の慈愛によりて我らを死なしめたまえ」
アリシア・デ・ラローチャのピアノ独奏。

Bachの音楽は時に恐ろしい。

何の遠慮会釈も無く、
全人格に向かってストレートに強烈に打ち込んでくる感覚。

ドイツ文学者の小塩節風に言えば、
ヨーロッパ文化の真髄。

すなわちキリスト教個人主義

たった1人の人間として神と対峙する事。

そこには最大の栄光と最大の悲劇が同在する。

過去の過ち、良心の呵責・・・

Bachの音楽は・・・時に私の心を・・・

主なる神よ、我を憐れみたまえ。