ふしだらな恋シリーズ その2 「スペイン編、ルイス・ブニュエル風」前編
チッ、何て~こった。
わざわざセビリアまで本物のフラメンコを観に来たと言うのに、
一体何たるザマだ。
気の抜けたような踊りに間の抜けたギター・・・
酷く失望して、
街外れのバル(酒場、バー、西語)にやって来たと言う訳だ。
その時、1人の老人が話しかけてきた。
老人「セニョール、浮かない顔をして飲んでるが、
どうかしなさったかね?
日本人かね?」
私「はい、日本から本物のフラメンコを観に来たのですが、
どうにもこうにも気の抜けたヤツばかりで、
酷く失望しました。
カンテ・フォンド(奥深き歌)を聴きたかったのですが・・・
残念です・・・」
老人(目の色が変わる)
「ソイツはイカン。まず、時間帯が悪い。
観光客が帰り、地元の人間が集まり出す、
これからの時間が本物のフラメンコを観られるんだよ。
もう一度、同じ場所に行ってごらん。
全く違っていると思うよ。」
と、老人は微笑んだ。
騙されたと思って私はもう一度、薄汚い洞窟に足を踏み入れた。
客層が違っていた・・・
何だか飲んだくれた男がゴロゴロしている。
観光客など1人もいない。
かなりヤバそうな雰囲気である。
これがヒターノ(ジプシー)の世界か・・・
一瞬、東洋人の観光客に目を向けるが、
特に関心はなさそうである。
ショーが始まった・・・
なんて~こった・・・さっきとはタッチが全然違う・・・
さっき聴いた小ギレイにまとまったギターの出だしとは全然違う。
どこかで聴いた事がある・・・この出だし・・・
サビーカスだ!!サビーカスのタッチだ!!
それにこの曲調・・・12拍子・・・
ソレア・・・紛れも無くソレアレス・・・カンテ・フォンドだ・・・
座っていた踊り子が静かに立ち上がり踊り出す。
その若い踊り子の目付き・・・ヒターナ(ジプシー女)のそれだ。
激しくも妖しく、しかし抑制された激情と言うべきか?
踊り子の汗のしぶきがかかってくる。
静かに聴き入る男ども。
終わった・・・実に素晴らしい・・・圧倒的である。
ザワザワとし始め、誰彼となく尋ねられた。
「日本人かね。こんな時間に聴きに来るなんざ~・・・
で、どうだったね。本物のフラメンコは?」
私「素晴らしかったです。非常に良い気分です。
ドゥ・エンデ(フラメンコの根本理念、大地の精霊)を感じました。
どうか、みなさん、一杯おごらせて下さい。」
客達は酷く嬉しがってくれた。
また、アルティスタ(演奏者)達にも一杯差し上げる事が出来た。
先程の刺すような目付きをした踊り子もニコニコしながらこちらを見詰めていた。
充実した夜を満喫し、洞窟を後にした。
老人にお礼を言うため、酒場に寄った。
私「先程はどうも。大変楽しめました。
どうか、一杯おごらせて下さい。」
老人「そうか、良かったね、セニョール。
しかしどうやら、今夜は『本物のフラメンコ』をこれから見られるようだよ。」
振り返ると、ソコには先程の踊り子が神妙な面持ちで立っていた。
「セニョール、これから私と一緒に来てくれる?フラメンコを『魅せて』あげるわ。」
ふしだらな恋シリーズ その2「スペイン編、ルイス・ブニュエル風」後編(限定版)へ続く
わざわざセビリアまで本物のフラメンコを観に来たと言うのに、
一体何たるザマだ。
気の抜けたような踊りに間の抜けたギター・・・
酷く失望して、
街外れのバル(酒場、バー、西語)にやって来たと言う訳だ。
その時、1人の老人が話しかけてきた。
老人「セニョール、浮かない顔をして飲んでるが、
どうかしなさったかね?
日本人かね?」
私「はい、日本から本物のフラメンコを観に来たのですが、
どうにもこうにも気の抜けたヤツばかりで、
酷く失望しました。
カンテ・フォンド(奥深き歌)を聴きたかったのですが・・・
残念です・・・」
老人(目の色が変わる)
「ソイツはイカン。まず、時間帯が悪い。
観光客が帰り、地元の人間が集まり出す、
これからの時間が本物のフラメンコを観られるんだよ。
もう一度、同じ場所に行ってごらん。
全く違っていると思うよ。」
と、老人は微笑んだ。
騙されたと思って私はもう一度、薄汚い洞窟に足を踏み入れた。
客層が違っていた・・・
何だか飲んだくれた男がゴロゴロしている。
観光客など1人もいない。
かなりヤバそうな雰囲気である。
これがヒターノ(ジプシー)の世界か・・・
一瞬、東洋人の観光客に目を向けるが、
特に関心はなさそうである。
ショーが始まった・・・
なんて~こった・・・さっきとはタッチが全然違う・・・
さっき聴いた小ギレイにまとまったギターの出だしとは全然違う。
どこかで聴いた事がある・・・この出だし・・・
サビーカスだ!!サビーカスのタッチだ!!
それにこの曲調・・・12拍子・・・
ソレア・・・紛れも無くソレアレス・・・カンテ・フォンドだ・・・
座っていた踊り子が静かに立ち上がり踊り出す。
その若い踊り子の目付き・・・ヒターナ(ジプシー女)のそれだ。
激しくも妖しく、しかし抑制された激情と言うべきか?
踊り子の汗のしぶきがかかってくる。
静かに聴き入る男ども。
終わった・・・実に素晴らしい・・・圧倒的である。
ザワザワとし始め、誰彼となく尋ねられた。
「日本人かね。こんな時間に聴きに来るなんざ~・・・
で、どうだったね。本物のフラメンコは?」
私「素晴らしかったです。非常に良い気分です。
ドゥ・エンデ(フラメンコの根本理念、大地の精霊)を感じました。
どうか、みなさん、一杯おごらせて下さい。」
客達は酷く嬉しがってくれた。
また、アルティスタ(演奏者)達にも一杯差し上げる事が出来た。
先程の刺すような目付きをした踊り子もニコニコしながらこちらを見詰めていた。
充実した夜を満喫し、洞窟を後にした。
老人にお礼を言うため、酒場に寄った。
私「先程はどうも。大変楽しめました。
どうか、一杯おごらせて下さい。」
老人「そうか、良かったね、セニョール。
しかしどうやら、今夜は『本物のフラメンコ』をこれから見られるようだよ。」
振り返ると、ソコには先程の踊り子が神妙な面持ちで立っていた。
「セニョール、これから私と一緒に来てくれる?フラメンコを『魅せて』あげるわ。」
ふしだらな恋シリーズ その2「スペイン編、ルイス・ブニュエル風」後編(限定版)へ続く