都市生活と「死」と「樹海の歩き方」

随分前に読んだ確か養老孟司の本に書いてあったと思う。

「都市」とは人間が頭の中で理想化した事を現実化した場所である、と。

最近までは田中角栄日本列島改造論以降に代表される、
都市生活にこそ理想郷があると信じ、
自然を排除し尽くしてきた。

しかし、今に至って疑問を感じ始めている人が多くなっていると思う。

上下水道・ガス・電気に始まるライフライン

エアコン、空気清浄機、高層建築、高度医療、過度の衛生、整備された交通網等々・・・

そして演出される洗練された空間。

排除される異質な物や者。

この都市生活の行き着く先に幸福はあるのか?

都市生活をしていると、
最終的に「死」を排除しようとあがいているようにも感じる。

誰もが「死」を意識しないし、
遠い未来の事だと勝手に思い込んでいる。

意識する者は「鬱」と言われ、排除される。

さて、「樹海の歩き方」は徹底的に「死」を意識させる希有な本だ。

樹海の中を歩くと・・・

「死を求める者」

「死を求めた者」

これらが嫌と言うほど出てくる。

「死を求める者」は実は非常に多い。

毎年3万人を優に超える者が「既遂」に成功する。

「未遂」を含めたらどれだけになるのか・・・

少なくとも交通事故死者の比ではない。

普段は意識しない「死」をここまで意識させる本。

特に最後の「袋綴じ」・・・

求めた者の最後の姿が写っている。

非常に強烈である。

結局人間は死から逃れられない事を見せ付けられる。

また、自然の中において「死」は非常に身近である事も。

都市では色々な事が「危険」だと言われ禁止されている。

川では泳げないし、釣りすら制限が多い。

死を意識しないで生きる事は果たして幸せなのか?

少なくとも私には強烈過ぎる本であった。

今は手元に無い。

私の精神力では支え切れない本だった・・・