心の原風景

矢口高雄と言う漫画家がいる。
釣りキチ三平」と言う、
昭和40年代に釣り好き小学生だった者から見ると、
バイブルのようなマンガを描いた人だ。

その人のエッセイでこんなような文があった。

矢口高雄は確か秋田県?の田舎育ち。

小学生のある日、東京からの転校生が来た。
絵を描く授業だったのだが、
その子の絵にクラスの皆がブッ飛んでしまった。

「ビルの間を走る電車の絵」

見た事もない風景に、
クラス全員が好奇心でその転校生の絵に見入った。

それから何年も経ち、
漫画家として成功した矢口が東京に幼い娘を連れて出て来た。

娘の転校先の東京の小学校の絵の時間・・・
矢口の娘の描く絵にクラスの皆がブッ飛んだ。

「山や森や田に囲まれた豊富な自然の風景」

見た事もない風景に、
クラス全員が好奇心でその転校生の絵に見入った。

心の原風景・・・

もちろん私はビルに囲まれた都市の風景になるのかもしれない。

しかし、決して忘れない風景がある。

幼い頃、母の生まれ故郷の東北の某県で。

夏のある夜、母におんぶされてどこかに連れて行かれた。

「さあ、着いたよ。」と言われると、そこには・・・

何千、否、何万の蛍が乱舞していた。
広がる田んぼ。
ふと上を見ると、そこには蛍の数に負けない星、星、星。
夏の天の川が見事に立ち上がっていた。

蛍と天の川。
私の心の原風景の一つである。