昨日ご紹介した本「不便でも気にしないフランス人、便利でも不安な日本人」の内容の中で、
私が最も気にしているものを紹介したいと思います。
ちなみに著者はフランスで最古の歴史あるAFP通信の記者なので著述内容は極めて正確であると思います。
かねてより当ブログにおいては、
日本の労働環境はかなり酷く、有り得ないほど過酷だけれども、
日本人自身はほとんど気付いていないし、気付こうともしない、
あるいは諦めている、と主張しています。
典型的なものは単身赴任、長時間労働、休日出勤などでありましょう。
ヨーロッパでは、特にドイツではおそらく有り得ないと書きました。
しかしこの問題について、正確な比較をした本を読んだことがなかったため、
「おそらく」と言う言葉を入れざるを得ませんでした。
今は断言できます。
「おそらく」を外せます。
単身赴任、長時間労働、休日出勤は少なくともフランスでは有り得ない、と。
有給休暇の取得率は何と100%だそうです。
日本は50%くらいだと言うから驚きです。
日本人がそれでも幸せであると感じているのなら別に単身赴任や長時間労働があっても構わないと思うのです。
けれども、日本人は先進国中で「自分を幸福だと思うか?」と言う問いに対して、
「最低」なのです。
また、自分の未来についてもフランスと比較すると日本人は顕著に(20%くらい)悲観的に捉えている調査結果が挙げられていました。
失業率はフランスの方が遥かに酷いそうなのですが。
まあ、育児環境などの福祉はさすがにフランスの方が遥かに上だと思いました。
この点は日本も早急に見習うべきなのかも知れません。
さて、フランス人にとっては、
自分の家族が会社の命令によって引き裂かれる単身赴任のような事態を異常だと見做しているようです。
少なくとも、日本のように簡単に応じられるようなものではなく、
万が一強制性を伴っていたらかなり深刻な事態、つまり裁判沙汰になるようです。
どちらが正しいのか?
と言うよりもどちらがより幸福なのだろうか?と言う視点で考えた場合、
明らかにフランスの方が上です。
もし、ここでそうではないと考える人がいるのならば、
はっきり私は主張します。
「人間を辞めた方がいい」です。
人間の幸せの本質を著しく逸脱しているからです。
本の内容を補足すると、少なくともフランス人は、
もし単身赴任を強要するような上司もしくは会社であるのなら、
「悪魔の所業」と見做すように感じました。
そしてそのような考え方は「人間として正しい」と私は思います。
家族がバラバラにされる事態を、
まして幼い子供がいた場合、
まともな人間なら本来出来るような所業ではありません。
何故日本でのみ顕著にこのような問題が起こってしまうのでしょうか。
結局のところ、自分で自分の人生の幸せを考えないで、
他人との関係のみをベースに考えてしまうからでありましょう。
フランスは良くも悪くも個人主義の国なので、
自己主張が非常に強く、商店やレストランでも店員はかなり威張っています。
これは私も経験済みですが、
少なくとも彼らはお客様は神様とは考えていません。
酷い扱いを受けることすら稀ではありません。
クレーマーが来たら「うるさい!!」と怒鳴りつけて席を立ってしまうそうです。
まあ、相手がクレーマーでなく正当なクレームでもソレをやるらしいのには辟易しますが。(苦笑)
また、コンビニも無いと書いてありました。
フランス人は24時間営業の店は必要ないと考えているようです。
あるいは不便でも、そんな労働環境はダメだろう?と考えるようです。
文化の差とは非常に強烈であると私は思っています。
特にアジア圏とヨーロッパ圏の差は時に同じ人間か?と思うほど強烈です。
こういう差のある国同士を比較した場合、
日本人が何となく自分を不幸だと思っている理由(それも先進国で最悪)や、
あるいは労働環境を酷いと思いながらも主張できない理由が顕著に理解できてしまいます。
繰り返しになりますが、別に単身赴任していても、
自分が本心から幸せであると感じているのならそれはそれで個人の価値観の問題ですから、
特にどうこう言うつもりはありません。
しかし、先日NHKで単身赴任や転勤の悲惨な実態と、
家族の本心をようやく報道していましたが。
それはそれは悲惨なものでした。
そしてその悲惨さの主張は、極めて正常な感覚であると思います。
仕事だから、業務上必要だからと言う理由で、
数年間に8回も転勤を命じられた家族の実態とか。
切実な声を番組では取り上げていました。
この本は、一見するととてもユーモラスな本ですが、
深く考えて行くと現代日本が抱える闇が浮き彫りになってきます。
この種の問題は日本人同士が集まって議論していても決して問題の本質は見えて来ないし、
解決も出来ません。
全く違う異文化の価値観を目の当たりにした時。
初めて自分の置かれている境遇が分かると、私は思っております。
その意味で素晴らしい名著であると思います。
終わり