映画≪帰ってきたヒトラー≫の真の恐さについて

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映画≪帰ってきたヒトラー≫の真の恐さについて

この映画は映画館で既に鑑賞しているのだが、
妹が借りて来たので再度観た。

そして妹とちょっとこの映画について話したのが、
私が抱いていた疑問についてあっさりと答えてきた。

私の妹は20代のほとんどをイギリスで暮らしていたため、
一般的日本人の感覚とはちょっと違っているところがある。

今でもヨーロッパが大好きで、
映画でも音楽でもヨーロッパのそれを大変好んでいる。

さて、私がこの映画を観た時に、初日だったので映画館にはそこそこお客さんはいたが、
それでも満員と言う訳ではなかった。

ドイツでは大ヒットしたと言うが、
その後の日本においては全くと言っていいほど無名の映画のままだと思う。

何故なのだろうか?と。

私の妹はあっさりと言ってきた。

「この映画、(ほとんどの)日本人には分からないよ。」と。

最初、タイトルと私から話を聞いていた限りでは、
何でドイツでこの種の映画がヒットしたのか理解できないでいたらしい。

しかし実際に観たら凄く納得した、と。

現代日本におけるヒトラー像とは、
保守派の一部に今でも信奉したり憧れを持つ者もいるにはいるが、
ほとんどの日本人は否定的に見ている。

リベラル派に至っては、非常に激しい嫌悪感を剥き出しにして、
人格攻撃他、全てを否定してきてしまう。

ところがこの種の全否定者の特徴は「いい生活をしている者」がほとんどと言っていい。

良い職業に就き、良い給料をもらい、良い結婚をして、それなりに恵まれた環境の中で、
リベラルな思想を現代の価値基準の中で展開して悦に入っている。

しかしナチズムの真の恐さは飽食の豚の時代では決して理解できないのでは?と私は思っている。

肥えた豚が痩せた豚に成り下がった時にこそ威力を発揮する思想では?と。

今の日本と言う、何だかんだ言っても恵まれた環境の中で繰り出されているヒトラー批判ほど軽薄に聞こえるものはない。

安易にヒトラーを茶化して、単なる狂人として扱うことがどれほど危険な行為なのか。

リベラル派でそれを分かっている者は皆無に見えてしまう。

ドイツでは戦後大きく経済成長をして、今ではEUの盟主として君臨している大国となった。

このような時代においては、ナチズムはそれほど脅威にはならなかった。

しかし思わぬ事態がEUを襲っている。

難民。

大量の難民を受け入れたドイツではあったが、
今、ドイツは国を二分するような非常に大きな問題に直面している。

安易な難民受け入れは経済を逼迫させるだけでなく、
異なる人種との相互理解がどれほど難しいのかを思い知らせてくる。

頻発するテロ。

これに対して無邪気なリベラル派は明確な回答を用意しない。

ただひたすら平和念仏を唱えるだけ。

そしてもちろんこのような不穏な時代が到来すれば。

彼は再びやって来る、と。

この映画はコメディーとして描かれているが、
実際のところ私は恐怖映画に思えてしまう。

ここでちょっと話題を変えます。

映画が超大好きな妹とよく話をしているのだが、
彼女はかなりグサッと来る辛辣なことを時に言ってくる。

例えば、これはデーブ・スペクター氏の言葉らしいのだが、
「日本の映画やドラマは最悪ですよ。
 その最大の原因は役者の演技の下手さかげんにあります。
 恐ろしいのは役者自身が自分達の下手さに気付いていない点にあります。」

これを引用した後、こう言う。

「日本の映画やドラマってジャリタレやらアイドルやらを使って話題だけはあるけど、
 本格的な演技を勉強していないから異様に下手過ぎてとてもではないが見ていられない。
 ある意味、ああいう映画やドラマで満足している人達を羨ましく思う。」とまで。

実のところ、この意見に私は結構な点において同意している。

特に最近の傾向として。

日本の映画やドラマに慣れてしまっていると恐ろしい事態になるかと思っている。

例えば「シン・ゴジラ」は、それでもかなり面白く出来ていた方だとは思う。

けれども、映画通ではない私でも、
演技の下手さかげんはハンパないと思っている。

誰とは言わないが、見ていて恥ずかしくなるほど下手な役者がいた。

さすがにネットでも言われていたらしいが。

日本の映画で時折海外の映画賞を取って話題になっている作品は結構ある。

しかしそれらはほぼ全てメジャーな作品ではないことを思い知る必要があるのでは?と思っている。

日本では見向きもされていない小さな作品が突然海外で受賞して日本人が驚くパターンがとても多い。

北野武監督作品なんかがその典型かと。

良質な日本映画はあるにはある。

けれどもそれらは全てマイナーな小品に限られている、と。

今、とても恐ろしいなと感じていて、
妹とも意見が一致しているのは、
「海外で話題になっている良質な映画が日本ではほとんど観られていない」点にあるかと。

封切られても、ディズニーなど一部の子供向けは大ヒットするが、
「良質な大人の映画」は見向きもされない。

これは良い映画だったなと思った海外作品のほとんどはガラガラ。

今の日本人の心は内向き、国内向きになっているのかも知れない。

自分達の小さな世界で満足してしまい、他を拒絶してしまう。

これでは競争が起きないからますますつまらないものに成り下がって行く。

悪循環に陥っているのでは?と。

最後に私が何故かずっと忘れないでいる一場面を書いておきたいと思う。

これは今から37年前の1980年に黒澤明監督「影武者」がカンヌ国際映画祭で受賞した時のことだ。

多くの報道陣から質問をされていた。

その時、1人の外国人記者が恐ろしく鋭い質問を黒澤監督に投げかけてきた。

「(影武者は)素晴らしい作品だと思います。
 しかし、何故日本では昔の映画ばかりが作られているのでしょうか?
 現代の日本を描いた映画が観られないのはどうしてですか?」と。

巨匠黒澤明監督でもこの質問に対しては明確な返答は出来なかったと記憶している。

ちょっとしどろもどろになって答えていたように思う。

現代の日本を描いているメジャーな映画のほとんどは、
ジャリタレやアイドルを起用した愚にもつかないものがほとんどだから、とは言えなかったと思う。

そして再度妹の言葉を思う。

「ああいうので満足できる人達が羨ましい」と。

終わり