「生誕三〇〇年記念 若冲展」東京都美術館(上野)

「生誕三〇〇年記念 若冲展」東京都美術館(上野)

2016年5月3日

この展示会は4月22日~5月24日までの僅か1ヵ月の開催期間になっている。

しかし伊藤若冲の最高傑作群が全て勢揃いしている前代未聞の展示会だ。

そもそも私は開催と同時に行こうと思っていたのだが、
あいにく1週間の大阪出張とちょうど重なってしまい行けなかった。

とは言え、その前に行った国立新美術館(六本木)のルノワール展がそれほど混雑しないで鑑賞できたので、
若冲展もそんなには混雑しないだろうとタカをくくって4月30日(土)の、
それも午前10時(開場午前9時半)くらいに行った。

考えとしては、それなりに混雑はしているだろうから、
朝一番の行列がさばけた開場30分後くらいでちょうどいいだろうと思っていた。

ところがこの段階で既に80分待ちの入場規制がかかっていた。

即座に断念。

しかし僅か1ヵ月の開催期間なので悠長な時間はない。

そこで5月3日の開場1時間半前に混雑覚悟でやって来た訳だ。

既に長蛇の列が出来ていた。

この展示会の最大の目玉は「釈迦三尊像」3幅と「動植綵絵」30幅が一挙に公開される点にある。

他にも見逃せない大作が沢山来ているので今年最大級の美術展であるのは間違いない。

この展示会に行かずして何に行けばいいと言うのか。

それほどの内容であったかと思う。

けれども伊藤若冲とは不思議な画家であるかと思う。

そしてまた私達日本人の芸術に対する目はフシアナであるかとも思う。

つい最近まで伊藤若冲は忘れ去られた人だったからだ。

これほど大騒ぎされるようになったのは1990年代に入ってからだ。

きっかけは1970年に出版された辻惟雄氏の「奇想の系譜」で徐々に再評価が進み、
その後アメリカ人の収集家ジョー・プライス氏のコレクションにより1990年代から急速に知れ渡るようになった次第だ。

私達日本人には廃仏毀釈などの前科もあるため、
つくづく芸術作品の取り扱いには注意が必要だと思う。

もっともバッハですらもメンデルスゾーンがいなければ忘れ去られていた訳であるから、
洋の東西を問わず、どこでも同じなのかとも思う。

しかし、複雑で難解な対位法音楽などではなく、
伊藤若冲の絵は非常に分かり易い。

これが何故忘れ去られたのかは理解に苦しむ。

弟子が少なかったと言われるがそんなものなのか?

いずれにしても若冲の作品は緻密にして巨大、繊細にして大胆。

そして完璧なる写実にあるかと思う。

そのため、伊藤若冲展があると鑑賞者はとても厄介になる。

何故なら、若冲作品の真骨頂を知るには印象派の作品などとは違って、
「遠目での鑑賞」「近くでの鑑賞」「拡大しての鑑賞」と3段階に分けてする必要があり、
異常に時間がかかってしまうからだ。

若冲展に行く際の必需品は「単眼鏡」は最低でも必要で、
できたら性能の良い「双眼鏡」の持参が必要かも知れない。

私が行った時はやはり単眼鏡を使う人は多数いて、
中にはマニアっぽい若い女性が双眼鏡を使って鑑賞していた。

若冲作品の鑑賞方法を知り抜いているな、と思わず苦笑してしまった。

ともかく若冲作品は顕微鏡級の鑑賞方法すら必要になるほど細かい。

時間をかけてたっぷりと超精密に観なくてはならない。

ちなみに伊藤若冲は江戸時代、円山応挙と並んで絶賛されていたという。

円山応挙の本気の写実作品も素晴らしい。

若冲展の後、5月7日に松濤美術館円山応挙の作品も鑑賞出来た。

若冲とは違うタッチだが鯉の精密画を堪能できた。

さて、作品の一部をご紹介する。


動植綵絵「牡丹小禽図」↓
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動植綵絵「梅花群鶴図」↓
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動植綵絵南天雄鶏図」↓
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動植綵絵「池辺群虫図」↓
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動植綵絵「蓮池遊魚図」↓
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動植綵絵「紅葉小禽図」↓
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↓百犬図↓
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↑何とまあ可愛い子犬がいっぱいいること!!↑



↓石燈籠図屏風↓
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この絵、信じられない。
 石燈籠の部分などが点描画になっている。
 この時代に既にポスト印象派のテクニックを若冲が試していたとはと非常に驚いてしまった。



↓紫陽花双鶏図↓
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如何にもな若冲の作品。鶏を描かせたら天下一品!!↑



↓鳥獣花木図屏風↓

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↑この作品は以前から観たかったのでとても嬉しかった↑

いやはや凄い展示会だった。

もう一度行きたいけど間もなく開催期間終了とあの混雑と・・・・・

終わり