「ルノワール展 オルセー美術館・オランジュリー美術館所蔵」国立新美術館(東京・六本木)
2016年4月29日(金)昭和の日
国立新美術館(東京・六本木)
いやはや。
白人共が作り出した巨大帝国ヨーロッパ。
その頂点に君臨している首都は間違いなくパリであるかと思う。
この街の最大の特徴は「オシャレ最強。芸術最強」であるかと思う。
それがどれほどのものなのか。
アジアで最も繁栄をしていた都市東京。
この偉大なる都市の如何なる場所をもってしてもパリには全く敵わないと言っても言い過ぎではないだろう。
パリに一度でも足を踏み入れた者であるのなら即座に理解して頂けるかと。
そして現代のパリの美術館において最も注目されているのがオルセー美術館であるかと。
そのオルセー美術館の中で女を描かせたら天下一品の画家ピエール・オーギュスト・ルノワール。
そのルノワールの最高傑作が東京にやって来たのである。
この展示会は8月まで開催されているが、この間にオルセー美術館に行った人は楽しみの30%くらいは奪われてしまっているかと。(笑)
それほどこの展示会はインパクトがある。
ルノワールの描く女性達は女と言う生き物が最も美しく光り輝く一瞬を見事に描き出してくる。
そしてその女性達は常に幸福の中にいる。
ルノワールの絵画を鑑賞する者は人間の幸せを常に意識させられてしまう。
人間が最も幸福を感じる瞬間とは一体いつなのだろうか?
ルノワールは明確な回答を投げかけて来ていると、
彼の絵画を鑑賞する度に私は思っている。
それは「音楽と踊りと恋愛」だ。
≪ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会≫
この絵画の本物の前に立った時。
泣きたくなってしまった。
教科書やら画集では何度も目にしたことのある絵。
しかし、そんな印刷物の鑑賞が一体何の役に立つと言うのか。
世界に冠たる日本の美術館はかなり素晴らしいルノワール作品を持っている。
ああルノワールの作品っていいな、と思う。
その画家が生涯を通じて最も上手く描けた作品がこれでもか、と展示してあるのがオルセー美術館だ。
迫力の度合いが全然違っている。
日本人には人生を深遠な悲劇と捉えている人が多いと私は感じている。
真面目に生き、笑顔を失い、恋を失い、言葉を失い、人生とはこんなものだとうそぶき、達観者を気取る。
人生とは喜びばかりではない。
むしろ苦しみの方が多いのかも知れない。
だが、彼らフランス人は、パリジャンやパリジェンヌ達は、
音楽が奏でられる瞬間の刹那な幸せを決して逃しはしない。
音楽が奏でられる瞬間の刹那な幸せを決して逃しはしない。
刹那な恋を、刹那な幸せを捉え、一瞬の快楽に身をゆだねる。
それこそが人生の喜びなのだ、と言わんばかりに。
ルノワールはその瞬間を見せつけてくる。
人生も終盤にさしかかっている老いた日本人にはいささか厳しい作品かも知れない。
それでもルノワールの作品を鑑賞すると人間の幸福の基本を改めて再認識させられると思う。
達観者を気取ってはならないのだ、と思う。
それがルノワール作品を鑑賞することなのだ。
この眩い光を享受する喜びを。
終わり
余談:会場はフランス大好き、ルノワール大好きなオシャレの頂点を極めたような日本人女性で埋め尽くされている。
外国人もそれなりに多いのには驚かされたが。
しかし私は思う。
ルノワールの作品は女が見るもんじゃねー、と。(笑)
ルノワールは徹底的に女好きのヤツだ。
一見洗練されているが油は決して失っていない。
人生を諦めていない日本人の男こそが鑑賞すべき絵画であるかと思う。
余談2:私の妹は同じ兄妹でも私とは違って社交的でダンスもでき性格が全然違っている。
おまけに20代のほとんどをロンドンで暮らしていた。
しかし妹が好んでいるのはモネだとかコロー。
意外にも本質的なところで人間よりも自然を好んでいるように感じる。
私は非社交的で人間嫌いだと自分では思っているが、
ルノワールの作品がとても好きだ。
ルノワールの作品がとても好きだ。
さらにカイユボットを最も好んでいる。
何故なのだろうか?と思った。
おそらくは1800年代後半から1900年代初めのパリと現在の東京には共通点があるからだと思っている。
変貌して行く都市で暮らす人々の生きざまに共感を得ているのだ、と。
展示会情報および予想:
開催期間2016年4月27日(水)~8月22日(月)
今日行った時は午前10時半くらいだった。
入場制限もなく簡単に入れた。
会場内はそれなりに人が多いが大きくスペースを取っているためギューギュー感は全く無かった。
イヤホンガイドを借りてゆったりと鑑賞できた。
今後美術番組で取り上げられたら加速度的に混雑して来ると思う。
行かれる人は早めに行った方が良いかと。
以下、作品解説。
≪ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会≫
本物を鑑賞しよう。ともかく本物を鑑賞しよう。
今がそのチャンスだ。
素晴らしい絵画だった。
この絵の女性は後にルノワールの妻となるアリーヌ・シャリゴ。
実は最初、≪都会のダンス≫のモデル、シュザンヌ・ヴァラドンで描かれる予定だったそうだ。
シュザンヌ・ヴァラドン・・・・・
そう、ユトリロの母。
パリの芸術家の男のほとんどを恋に狂わせたとんでもない女性。
あのエリック・サティまでストーカーにさせてしまったほどの女性。
従ってアリーヌが嫉妬してヤバくなりルノワールはアリーヌをモデルとしたらしい。
だからアリーヌ、幸福そうな顔をしてますこと。(笑)
(イヤホンガイドより)
(イヤホンガイドより)
モデルはシュザンヌ・ヴァラドン。
どこまでも話題を提供してくれる女性。(笑)
≪陽光のなかの裸婦(エチュード、トルソ、光の効果)≫
ピエール・オーギュスト・ルノワール(1841-1919)
1876年頃(第2回印象派展 1876年)
油彩/カンヴァス 81×65cm オルセー美術館
ピエール・オーギュスト・ルノワール(1841-1919)
1876年頃(第2回印象派展 1876年)
油彩/カンヴァス 81×65cm オルセー美術館
この作品は≪ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会≫とは正反対の迫力がある。
緻密な描き方がされている上に上流階級のみの夜会が描かれている。
ムーラン・ド・ラ・ギャレットは金持ちから貧乏人まで階級に関係なく誰でも楽しんでいた場所だったらしい。
しかしベローの作品は上流階級のある種独特のイヤらしさを見事に描いて来ていると思う。