「スピードの中で精神は肉体を超越する」そして「キリンは泣かない」

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東本昌平(はるもとしょうへい)と言う漫画家がいる。

現在、私の最も好きな漫画家である。

「キリン」「SS」「RIDEX」など、
オートバイ乗りやラリーストの漫画を描いている。

実体験に基づかれているので、
非常にリアルな描写が凄い。

昨日書店で新刊を見つけた。
「RIDEX」の第一巻。

これは東本が出している月刊誌「RIDE」の、
巻頭に連載されている漫画を単行本化したもの。
一話ずつ完結する話しである。

これには様々な年代の「男」が主人公になっている。
第一話の「Seize the day」は妻と子を持った男の理想の一日が・・・
男とはこんな事を考えているのではあるまいか?・・・(^0^;

第五話の「Have a blow kiss」
男とはこんな結婚を考えているのではあるまいか?・・・(^0^;

第九話の「Snazzy Blues up」
男とはこんな風に老いて死んで行きたいと考えているのではあるまいか?・・・(--)

さて、東本昌平が一躍有名になった作品は、
「キリン」である。

様々な年代の男達がオートバイと言う乗り物を通して見た、
色々な生き方を見せ付けてくれる漫画である。

「キリン」のストーリーは、一応、3部構成になっている。

最初の4巻は「キリン」と呼ばれる38歳、×1、子有りの男が主人公。
舞台は東京中心部、首都高、第三京浜東名高速、246などが中心である。

その後のストーリーはキリンに係わった男達の物語になる。

読者は最初「キリン」と言うタイトルの意味が分らない。

しかし、後に作品中に出てくる。

「ライオンに目の前で我が子を食い殺されたキリンの親は泣かない。
 かと言って立ち向かう訳でもない。
 しかし、悲しくない訳はない。」

自動車を中心に構築される「都市」と言う空間。
自動車のための道路。自動車のための高速道路。

一見すると高度に洗練された都市空間。
しかし、その奥底に秘められた狂気を見事に描き上げている。

昨日、久しぶりにオートバイに少し乗った。
僅か100ccのスクーターだ。
それでもオートバイと言う乗り物は不思議な魅力を持っていると思う。

都市生活を送っていると、
時に人は死とは無縁になったと錯覚すら抱いてしまう。

オートバイは死を身近に感じさせる乗り物だ。

「キリン」で好きなシーンは、
第一部の結末の展開。
246を150km/h以上で駆け抜けるポルシェ。
キリンの駆る刀1100。
ポルシェの持つポテンシャルとドライバーの狂気が凄い。
圧倒的スピード感で展開され、そして結末は・・・

第2部。
忍者900R乗りのチョースケが女とスキーに行った帰り道、
キリンを見かけ、そして見失う。
帰ってからすぐに皮のスーツに身を包み、
オートバイを急発進させる場面。

乗らない者には意味を持たないが、
乗る者にとって全ての一連の動作が凝縮された素晴らしいシーンだ。

「スピードの中で精神は肉体を超越する」ロレンス。

男なら、例え肉食獣に食い殺されようとも立ち向かって行きたい、
とキリンのワンシーンに出てくる。

「死んでもいいから闘争する」と。

終わり